Kir2サブファミリーに属する内向き整流性カリウムイオンチャネル(Kir2チャネル)の生理機能を担う外向き電流の大きさは主に細胞内陽イオン(ポリアミンやマグネシウムイオン)による膜電位依存性ブロックによって調節さていることが明らかになっており、我々はその特徴的な負のネガティブスロープを示す膜電位依存性の発現に、陽イオンに対するブロック感受性の異なる2成分が関与していると考えられることをこれまで明らかにしてきた。本研究ではKir2チャネルの細胞内陽イオンによるブロックの詳細な分子メカニズムの解明を目指しており、本年度は先ず哺乳動物培養細胞に異所性に発現させたKir2.1チャネルを用いてインサイドアウトパッチ膜法によって細胞質側液のpHの影響を詳細に解析した結果、ポリアミン(スペルミン)による高親和性ブロックと低親和性ブロックの2成分はpHの影響をほとんど受けないこと、さらにポリアミンやマグネシウムイオンとは異なるメカニズムによってpHの酸性化によって引き起こされる極めて遅い時間経過を示す膜電位依存性のチャネルゲーティングが存在し、ポリアミンやマグネシウムイオンによる高親和性ブロックのおそらく結合部位として働く174番目のアスパルギン酸残基がやはり重要な役割を担うことを明らかにした。一方で昨年に引き続き、細胞内側液中の陽イオン濃度を正確にコントロールした状態でKir2チャネル機能の解析を可能とするため、人工脂質二重膜法によってチャネル活性を測定できる実験系の開発を目指し、Kir2チャネルの精製を行った。
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