研究課題
基盤研究(C)
今回の研究では血糖値変動が心筋に直接影響し、虚血再灌流障害に対してより脆弱になるか検討した。高グルコース濃度の培養液に暴露した心筋細胞では正常グルコース濃度にて培養した細胞より心筋細胞内の活性酸素種量が有意に増加し、培養液グルコース濃度を変動させた細胞ではさらに活性酸素種量が増加した。また酸化ストレスに対する脆弱性を調べるため過酸化水素水にて細胞障害を誘導した結果、各群のミトコンドリア膜電位が有意に低下したが、持続高グルコース暴露細胞は正常グルコース細胞に比し細胞障害が大きく、グルコース変動心筋細胞は持続高グルコースに比べさらに細胞障害が大きくなった。動物モデルを用いた実験では、摘出心臓をランゲンドルフ心臓灌流装置にて 20 分間灌流停止と 30 分間再灌流を行ない、梗塞サイズを評価した。糖尿病群では正常血糖群に比し梗塞サイズが有意に大きく、さらに血糖変動群では糖尿病群よりも有意に拡大した。ミトコンドリアの形態変化を電子顕微鏡にて観察した結果、糖尿病群と血糖変動群では正常血糖群に比べミトコンドリアが有意に膨化しており、顕著なクリステ構造の破壊が認められた。次にこれまでに認められた結果の機序を探るため心筋内の活性酸素種量と内在性抗酸化酵素活性について検討した。活性酸素種の指標である心筋内 malondialdehyde (MDA)は正常血糖群よりも糖尿病群、糖尿病群よりも血糖変動群で有意に増加していた。それとは逆に抗酸化酵素である catalase と superoxide dismutase(SOD)の活性は正常血糖群よりも糖尿病群、糖尿病群よりも血糖変動群で有意に低下していた。マイクロ RNA の発現をマイクロアレイを用いて網羅的に解析した結果、低血糖発作を繰り返させることにより2種類の microRNA の発現が有意に増加しており、 この発現変化が細胞内抗酸化システムの減弱を誘導し、虚血耐性の低下につながると考えられた。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (12件)
刊糖尿病
巻: Vol.5, No2 ページ: 76-81
J Mol Cell Cardiol
巻: 52 ページ: 1103-1111