研究課題/領域番号 |
22590211
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
山下 勝幸 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20183121)
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キーワード | 細胞内カルシウムストア / カルシウム放出 / 膜電位変動 / 電位感受性蛍光色素 / 核膜 / ゆらぎ / 同期 / 網膜 |
研究概要 |
細胞内Caストアを形成する核膜の膜電位は、Ca放出とK流入の相互作用によりバースト状に変動する。本研究は、この膜電位変化の機能的役割を明らかにすることを目的とする。鶏胚網膜を実験対象とし、核膜をラベルする電位感受性蛍光色素を用いて核膜の膜電位変化を記録すると同時に、Ca感受性蛍光色素を用いて細胞内Ca濃度変化を記録した。CaストアからのCa放出を起こすと、細胞内Ca濃度の上昇に先行して核膜の膜電位が変化した。また、自発的に生じる核膜の膜電位変化の周波数特性を解析した結果、200-300Hzの成分が主であった。また、核膜の膜電位変化の増大開始時点に一致してバーストスパイク発射が網膜神経節細胞間で同期して生じることを明らかにした。核膜と細胞膜が密着し細胞体どうしが隣接する場合、核膜の膜電位変動に伴う容量性電流が細胞膜を通過することにより細胞膜電位が変動し、細胞膜に存在する電位依存性Naチャネルが活性化され、細胞間で同期した活動電位が発生すると考えられる。これらの成果は、Biochemical and Biophysical Research Communications 406:107-111(2011)として発表した。さらに、この論文の補足データ(オンラインのみ)として、核膜の膜電位変化に同期した、網膜の内境界膜の外側における電位変化を発表した。平成23年度では、この電位の発生機序について解析した。ガラス管微小電極を用いて、網膜の内境界膜の内側において細胞外電位を記録した結果、網膜の内境界膜の内外において電位差が存在することを発見した。この電位は、CaストアからのCa放出、及び、Ca依存性Kチャネルを介した細胞外へのK流出により起こるものと考えられる。さらに、この細胞外における電位差は、網膜の領域によって異なり、細胞外電位勾配を形成することを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的については平成22年度にほぼ達成した。その成果は、Biochemical and Biophysical Research Communications,406巻,107-111頁(2011)として論文発表した。また、国内学会3件(招待講演1件を含む)、国際学会1件にて発表した。平成23年度はさらに新規な事実を発見し、この新規事実についてすでに学会発表(国内学会1件、国際学会1件)をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度では、新規に発見した細胞外電位勾配の生理学的意義を明らかにすることを目的とする。鶏胚から網膜を摘出して器官培養し、網膜神経節細胞の軸索伸長方向と細胞外電位勾配との関係を明らかにする。まず、網膜器官培養の方法を確立することが技術的な問題点である。さらに、培養液を介して細胞外電位勾配を人工的に与えることが実験遂行上の困難な点である。これらの問題点を克服する対策として、一定電流を長時間通電可能とする電極を作製し、さらに、この通電電極を組み込んだ培養装置を開発する。
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