最終(平成24)年度は、ABCトランスポータ・CFTRチャネルのATP依存性ゲーティングサイクルをATPアナログであるピロリン酸PPiを用いて詳しく解析した。その結果、において、チャネル開口中においてATP加水分解が完了した後、NBD2量体が部分解離してポアが閉口した状態Ciになるまでの間に、PPiの結合によって極めて速いレートで開口固定状態への移行が起こる中間状態Xiが存在することを明らかにした。この新規中間状態Xiにおいては、NBD2量体が部分解離しているのにもかかわらずポアが開口状態にある可能性が非常に高く、その場合、一回の開口イベント中に複数個のATP分子が加水分解されうることを示している。 このCFTRチャネルにおけるATP加水分解サイクルとゲーティングサイクルとのルーズカップリングは、CFTRがメンバーであるABCトランスポータ・スーパーファミリーの他の輸送ポンプ分子の場合にも同じ現象が起こっていると想定すると、基質1分子を上り坂輸送(外部仕事)するのに消費されるATPの数(入力エネルギー)が確率的に変化していることを意味しており、生体エネルギーの理解において極めて重要な発見である。 つぎに、金沢大学・安藤敏夫研究室と高速原子間力顕微鏡を用いた共同研究を行い、CFTR1分子の高速AFM像を空間分解能0.1nm・時間分解能300ms/frameで得ることができた。さらにPKA catalytic subunitを投与して観察したところ、CFTR分子の持つリン酸化サイトがあると予想される部位に結合・解離を繰り返す動画を得ることにも成功した。この成果は、日本生物物理学会年会および日本生理学会年会で発表した。
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