受精は生殖の基本的事象であり、その分子メカニズムの解明は生殖科学のみならず社会的な貢献も大きい。最近我々は、アフリカツメガエル卵保護膜に新規蛋白質dicalcin(ダイカルシン)を見出した。本研究ではツメガエルおよびマウスにおいてダイカルシンの受精阻害作用の分子機構を解析し広く脊椎動物の受精の分子メカニズムを解明することを目的とする。平成24年度はさらに解析を進め、以下の項目について解析した。 1. ダイカルシンと卵保護膜糖タンパク質間の相互作用の解析 前年度までに、ツメガエルダイカルシンが保護膜糖タンパク質gp41に結合し保護膜糖鎖分布を調節することを明らかにした。そこで、ダイカルシンとgp41の相互作用の解明のために、ダイカルシンのgp41結合領域を解析した。まず、ダイカルシンの一部領域を欠失した変異蛋白質を作製し、変異蛋白質とgp41との結合能を解析したところ、ダイカルシンのN末端領域にgp41結合領域が存在することが示唆された。 2. マウスダイカルシンホモローグの受精効率に及ぼす作用の解析 前年度までに、マウスダイカルシンホモローグが、卵管内の卵・卵丘細胞複合体において、卵丘細胞の細胞膜上に存在することを明らかにした。そこで、マウス未受精卵を用いたin vitro受精実験を行い、前核形成率により受精率を解析した。その結果、過剰量のマウスダイカルシンホモローグをあらかじめ未受精卵と反応させた後媒精した場合は、前核形成率は低下することが分かった。以上より、マウスダイカルシンは、卵・卵丘細胞複合体の卵丘細胞を介し受精阻害作用を現す可能性が示唆された。
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