研究概要 |
蝸牛内リンパ腔電位(endocochlear potential, EP; +80 mV程度)は音受容の際に有毛細胞に電流を運ぶ重要な役割を担っていると考えられている。しかし、EPの発生や調節機構については未だ解明されていないのが現状である。これらの機序を解明することにより、末梢性感音難聴の一つである急性虚血性および薬剤性難聴の治療に検討を加えていきたい。現時点では、無呼吸負荷によるEPの低下は内リンパ腔周辺細胞内(特に血管条辺縁細胞やラセン隆起の線維芽細胞)のCa2+濃度上昇によるタイト結合の電気的抵抗の低下ではないかと推論した(Mori et al., J Physiol Sci, 59, 2009)。事実、内リンパ腔周辺細胞の細胞間結合に共通のクローディン14の先天的異常は難聴を来すことが報告されており、この動物モデルを用いての電気生理学的研究は末梢性感音難聴の解明に新たな知見を提供するものと考える。本研究では、(1)内リンパ腔周辺細胞のタイト結合の性格を無呼吸負荷時における内リンパ腔液のイオン変化から解析し、(2)クローディンノックアウトマウスを用いてEPの調節におけるクローディンの関与を検討した。 1)電気生理学的実験:白岩(本学助教)、大学院生と共に主にモルモットを用いて、血管条辺縁細胞のCa2+濃度変化により、基底側膜の電気抵抗が変化し、EPが変化することを見出した(論文投稿中)。 2)分子生物学的操作:大黒、白岩(本学講師、助教)と共にクローディン14KOマウス作成に成功し、EP測定を行ったが~90 mVを有しており、wildtypeのマウスとの差を確認すると同時に内リンパ液のイオン濃度を測定している。25年度中には論文を発表出来ると考えている。
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