前年度までの研究で、K+チャネルの分解が発現量に応じて変化することを、SNAPタグ、蛍光タイマー(FT)を用いて明らかにしてきた。これを機能的なチャネル量という点から裏付けるため、発現量が多いCMVプロモーターと、少ないSV40プロモーターを用いて、SNAP-Kir2.1を293Tに発現させ、全細胞記録によってKir電流を測定し、電気生理的に検討した。遺伝子導入24時間後には、CMVプロモーターの方が、Kir2.1電流が大きかったが、48時間後には差はなくなり、発現量に応じてKir2.1チャネル分解が変化していることが裏付けられた。 in situ及びin vivoで検討するため、FT-Kir2.1を発現するレンチウイルスベクターを作製し、ラット海馬(in vivo)と培養海馬スライス(in situ)に注入した。In vitroで観察できたFTの蛍光は、in vivoやin situでは自家蛍光のため検出困難であった。ニューロンでの発現量が多いカルシウムカルモジュリンキナーゼ(CaMKII)とFTの融合タンパクも作成し、培養スライスに発現させたが、同様に検出困難であった。次に、レンチウイルスベクターでSNAP-Kir2.1をin situで発現させ、SNAPタグ特異的に共有結合する蛍光色素SNAP-cell-TMR-Starによってパルスラベルしたところ、神経細胞の細胞体、樹状突起に蛍光が認められ、in situでの蛍光タギングに成功した。in vivoタギングのために、ラット海馬にレンチウイルスベクターを注入し、SNAP-cell-TMR-Starを注入したが、蛍光陽性細胞は認められなかった。発現量が多いシンドビスウイルスベクターで融合タンパクを発現させても、改善は認められず、蛍光色素のdeliveryに問題があることが示唆された。将来の課題が明らかになった。
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