まず、断眠に対するAMPKの応答を免疫組織学的手法により解析しようと試み、AMPKおよびリン酸化AMPKの抗体を入手しトライした。ウエスタンブロット法を用いた定量には成功したが、組織学的に染色することは未だできていない。抗体を変更するなど、継続して検討中である。また、核内受容体であるPPARalphaのノックアウトマウスにおいて、AMPKのエンハンサーAICARや阻害薬であるcompound_Cの効果が見られなかったことから、以前我々が報告したこれら薬物の睡眠期デルタ波への効果は、PPARalphaを介する、あるいは、必要とするものであることが分かった。AMPKおよびPPARは絶食時に活性化することが知られていることから、我々は、妊娠マウスに摂餌制限を負荷し、低出生体重モデルマウスを作製した。そして、成長した後にその仔マウスの睡眠ホメオスタシスを観察した。仔マウスでは睡眠期のデルタ波が24時間にわたり増強していた。一方、仔マウスの脳視床下部においてPPARalpha mRNA発現が増加していたが、AMPKの活性化は見られなかった。これらの結果から、AMPKは脳内において摂食行動など重要な役割を担っており、断眠においてそのリン酸化が亢進するものの、睡眠のホメオスタシス(デルタ波)に関しては、少なくとも直接的な関与が存在するとはいえないことが明らかとなった。今後、PPARalphaなど、AMPKと関連性を持つ他の因子について解析を進める。
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