研究課題
哺乳動物には白色と褐色、2種類の脂肪組織がある。白色脂肪がエネルギー貯蔵部位であるのに対して、褐色脂肪は代謝的熱産生の特異的部位であり、体温やエネルギー消費の調節に寄与している。褐色脂肪についての従来の知見の大部分は、マウスなどの実験動物から得られたものであったが、申請者らは核医学的手法(FDG-PET/CT)を利用して健常成人にも多くの褐色脂肪が存在することを世界に先駆けて明らかにしてきた(Diabetes 2009,58:1526-1531)。これらを踏まえて、前年度は寒冷刺激に対するエネルギー消費応答と褐色脂肪活性との間に有意な相関がみられ、ヒトでの寒冷誘導熱産生に褐色脂肪が寄与していること、及びそれが体温調節に一定の役割を果たしていることを証明した(Obesity 2011,19:13-16)。23年度はヒト褐色脂肪が体脂肪の長期的な増減にどの程度寄与しているのかを明らかにするために、以下の実験・解析を行った223名の健常被験者を対象に、寒冷刺激を与えてFDG-PET/CT検査を行い褐色脂肪活性を評価した。同時に肥満指標(BMI,内臓脂肪量、皮下脂肪量など)を測定し、両者の関係を解析したところ、褐色脂肪活性が高いと肥満度が低い、加齢に伴い褐色脂肪活性が低下し肥満度が上昇することなどが明らかになった。これらの結果から、褐色脂肪によるエネルギー消費が体脂肪蓄積、特に加齢にともなう内臓脂肪蓄積を抑制すると結論した。これらの成果を中心に、健常人の褐色脂肪が肥満に直接関与することを世界で初めて報告した(Obesity 2011,19:1755-1760)。
1: 当初の計画以上に進展している
肥満との関係について、特に加齢に伴う肥満に対する褐色脂肪の役割について明確かつ新規性の高い成果が得られ、それらを米国肥満学会誌に原著論文として発表した。
加齢にともない褐色脂肪活性が減少するメカニズムについて、遺伝子多型の関与を中心に検討する予定である。
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