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2012 年度 実績報告書

視床下部神経ペプチドによるげっ歯類性社会行動の調節機構

研究課題

研究課題/領域番号 22590229
研究機関帝京科学大学

研究代表者

近藤 保彦  帝京科学大学, 生命環境学部, 准教授 (00192584)

研究期間 (年度) 2010-04-01 – 2014-03-31
キーワード社会行動 / 性行動 / 痛覚 / 視床下部 / 自律神経系 / オキシトシン / ラット / マウス
研究概要

近年、視床下部室傍核におけるオキシトシン神経細胞が、つがい形成や母性行動、社会的認知などのさまざまな社会行動を調節していることが知られるようになってきた。我々も昨年まで、母ラットが仔ラットの匂いに対して示す選好性(匂いに惹きつけられる行動傾向)は出産・仔育て行動によって形成されるが、これは仔の匂いに対するオキシトシンニューロンの反応性が深くかかわっていること、また、マウスが示す異性の匂いに対する選好性がオキシトシン遺伝子を欠損した(OTKO)マウスで失われていることを示した。さらに性的未経験な雌マウスは、雄との社会的相互作用の中で次第に雄を受け入れるようになるが、OTKOマウスでは雄を受け入れるようになるまでに非常に時間を要することもわかった。一方で、視床下部オキシトシンの影響は社会行動に限らず、自律神経系を介した痛覚感受性にもかかわっているようである。まず、雄ラットの性行動が痛覚閾値にどのような影響を持つかを、尾部に電極を装着して痛覚閾値の測定を行った。刺激は弱い電流から次第に強くしていき、ラットが体動もしくは発声によって反応した電流量を痛覚閾値と定義した。実験群は、性行動を行わせずに測定した群、性行動を行わせたが射精前に中断した群、性行動を射精まで行わせた群の3群で、痛覚閾値は射精の有無にかかわらず性行動を行わせることによって高くなることが分かった。そこで性行動直前にあらかじめオキシトシン拮抗剤を脳室内投与しておくと、性行動の遂行自体には影響しないがその後の痛覚閾値の上昇を抑制することが分かった。これらのことから、性行動によって視床下部オキシトシンニューロンが活性化され、それによって痛覚閾値の上昇、すなわち痛覚鈍化が生じていることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年までにオキシトシンの性行動と母性行動の実験を一区切り完了し、現在、論文準備中である。さらにそれに続く研究として、性行動時のオキシトシンニューロンの活性化とその痛覚閾値への影響に対する研究を行った。

今後の研究の推進方策

今年度は、さらに性行動場面とは離れて末梢の生殖器刺激が自律神経の活動と痛覚閾値にどのような影響を及ぼすかを検討する。また、FGF5(Fibroblast growth factor 5)が嗅覚系に発現していることから、このペプチドが性行動や嗅覚選好性の調節にかかわっているかをFGF5 nullマウスを用いて検討する予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2013 2012

すべて 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [学会発表] 出生直後dihydrotestosterone投与によるラット脳の雄性化:思春期アンドロゲンとの相乗作用2013

    • 著者名/発表者名
      堀敬介・遠藤知子・後藤優風・近藤保彦
    • 学会等名
      第90回日本生理学会
    • 発表場所
      タワーホール船堀(東京)
    • 年月日
      20130327-20130329
  • [学会発表] Effects of neonatal single injection of ethinyl estradiol on feeding, Learning and sexual behaviors in adult female rats.2013

    • 著者名/発表者名
      Kamishima, M., Kobayashi, Y., Senbon, T., Komine, C., Uemura, H., Yoshida, M., Kondo, Y. and Kawaguchi, M.
    • 学会等名
      The 17th Federation of Asian Veterinary Association (FAVA) Congress
    • 発表場所
      Taipei, Taiwan
    • 年月日
      20130104-20130107
  • [学会発表] 出生24時間以内の雌ラットへのEthynyl estradiol曝露が成熟後の性選好性に与える影響2012

    • 著者名/発表者名
      小田島夢花・宮田能・中島春香・近藤保彦・吉田緑・川口真以子
    • 学会等名
      第15回環境ホルモン学会
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      20121218-20121219
  • [学会発表] 出産・育児経験により獲得される仔に対する嗅覚選好性と脳内オキシトシン系の反応性2012

    • 著者名/発表者名
      棟朝亜理紗・石井寛高・佐久間康夫・近藤保彦
    • 学会等名
      第39回日本神経内分泌学会学術集会
    • 発表場所
      北九州国際会議場
    • 年月日
      20120928-20120929
  • [学会発表] 出生直後の雌ラットethynyl estradiol曝露が成熟後の性行動に及ぼす影響2012

    • 著者名/発表者名
      小峰千亜希・近藤保彦・植村英恵・千本隆志・川口真以子
    • 学会等名
      第105回日本繁殖生物学会大会
    • 発表場所
      筑波大学
    • 年月日
      20120905-20120908
  • [学会発表] ラットの性行動および嗅覚選好性神経調節における分界条の役割2012

    • 著者名/発表者名
      徳丸祐一・南愛梨・近藤保彦
    • 学会等名
      第17回日本行動神経内分泌研究会
    • 発表場所
      関西セミナーハウス(京都)
    • 年月日
      20120830-20120901
  • [学会発表] ラット脳の性分化におけるアンドロゲン受容体の機能再評価2012

    • 著者名/発表者名
      遠藤知子・渡辺亜香沙・近藤保彦
    • 学会等名
      第17回日本行動神経内分泌研究会
    • 発表場所
      関西セミナーハウス(京都)
    • 年月日
      20120830-20120901
  • [学会発表] 出生直後のEthynyl Estradiol 曝露がラットの学習行動に及ぼす影響2012

    • 著者名/発表者名
      千本隆志・小林由紀・近藤保彦・川口真以子
    • 学会等名
      第17回日本行動神経内分泌研究会
    • 発表場所
      関西セミナーハウス(京都)
    • 年月日
      20120830-20120901
  • [学会発表] 出産・育児経験による仔に対する嗅覚選好性と脳内オキシトシン系の反応性の変化2012

    • 著者名/発表者名
      棟朝亜理紗・石井寛高・宮本武典・佐久間康夫・近藤保彦
    • 学会等名
      第17回日本行動神経内分泌研究会
    • 発表場所
      関西セミナーハウス(京都)
    • 年月日
      20120830-20120901
  • [学会発表] げっ歯類における嗅覚選好性とその神経調節機序2012

    • 著者名/発表者名
      近藤保彦
    • 学会等名
      群馬大学医学部 伊香保BSの会・第2回多分野交流会
    • 発表場所
      群馬大学医学部
    • 年月日
      20120825-20120826
    • 招待講演
  • [図書] 心理学検定模擬問題集2012年度版「神経・生理領域」2013

    • 著者名/発表者名
      近藤保彦
    • 総ページ数
      436
    • 出版者
      実務教育出版
  • [図書] 性をめぐる生物学―ネズミから学ぶ2012

    • 著者名/発表者名
      オスの性を科学する
    • 総ページ数
      121
    • 出版者
      アドスリー

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公開日: 2014-07-24  

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