研究課題/領域番号 |
22590230
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
小澤 一史 日本医科大学, 大学院・医学研究科, 教授 (60169290)
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研究分担者 |
飯島 典生 日本医科大学, 医学部, 准教授 (00285248)
澤井 信彦 群馬大学, 大学院・医学研究科, 助教 (70307916)
楊 春英 日本医科大学, 医学部, 助教 (70303435)
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キーワード | キスペプチン / GnRH / 性ステロイド / 性差 / 摂食調節 / ストレス応答 / 遺伝子発現 / 生殖神経内分泌 |
研究概要 |
本研究は、性機能調節システムを産み出す過程に焦点を当て、GnRH遺伝子にenhanced green fluorescent protein(EGFP)遺伝子を組み込むことによって開発された遺伝子組み換えラットを用いて、GnRHニューロンの発現、形態と機能を解析し、さらにGnRHニューロンを中心とした神経回路網の構築に関わる性ホルモンの影響を多角的な分子イメージングを用いて考察する。そして、その過程で、思春期発現を誘導する神経ネットワーク機構の構築と機能発現に及ぼす性ホルモンの影響を精査し、GnRHニューロンを中心とした生殖機能調節システムについて、機能と形態の相関を三次元分子イメージングとして解明することを目標とし、近年、思春期前後のGnRHニューロン活性を誘導する新規生理活性ペプチドとして同定された、キスペプチン(Kisspeptin){またはメタスチン(Metastin)}の機能、形態と性機能神経調節系における役割を解析することである。本研究ではKisspeptin発現神経細胞に対する性ステロイドの影響、GnRHニューロンに対するキスペプチンの作用とその仕組みに関わる性ステロイドの影響、そしてエネルギー代謝調節システムとして関わる末梢からのレプチンと、それに反応する中枢のNPY,orexinといった摂食制御神経システムとの相互作用についても検索を進めてきた。そして、思春期前後におけるKisspeptinの遺伝子発現や蛋白発現の変動と共にGnRHニューロンが活性化され、性機能調節神経ネットワークが成熟し、思春期が発動される過程における分子形態学的構成と制御物質について、組織細胞化学的手法、免疫組織学的手法、共焦点レーザ顕微鏡、電子顕微鏡などの多角的イメージング集約解析法を導入し、思春期前後の正常な「摂食」、「性」、「心」の安定を導く神経回路構築について研究してきた。Kisspeptinニューロンの発現や性ステロイドによる制御、性差、ストレス応答系の直接関与などを明らかにし、最終的な三次元ネットワークの構築を解析する段階に至っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科学研究費申請時に設定した研究計画は、ほぼ予定通りに進んでいる。当初予定していた、摂食制御神経ネットワークとの関連に関する研究が、エネルギー代謝実験モデルの設定の複雑性などで、少し遅れ気味であったが、現在、いくつかの問題も解決し、予定のラインに戻りつつあり、最終年度に十分な研究報告をまとめることが出来そうである。
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今後の研究の推進方策 |
思春期が成立する際の神経ネットワークの三次元構築と、様々な神経ネットワークによるクロストークに関する解析が十分に進みつつある。これらが最終的には高次脳機能、すなわち「こころ」の構築にそのように影響を与えるのかが大きな課題である。行動神経科学、行動神経内分泌学的な観察を加え進める一方、遺伝子レベルでのホルモンやその受容体の発現パターンなどの解析も加え、より深い研究を展開する予定である。
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