ヒト心室筋活動電位の再分極において重要なIKsチャネル(Q1/E1チャネル)がアンジオテンシン受容体1型(AT1受容体)およびα1A受容体の活性化によってエンドサイトーシスされること、そしてAT1受容体刺激によるエンドサイトーシスにはQ1蛋白のC末端に存在するPKCリン酸化部位が必要であるのに対し、α1A受容体刺激の場合は、その部位の関与はないことを昨年度までに明らかにした。本年度は、以下の結果を得た。 1. Nedd4-2によるQ1蛋白のエンドサイトーシスが報告されていたため、ユビキチン化の関与について検討した。Q1のC末端に存在するPYモチーフ(Nedd4による認識に関与)の変異体を作製し発現させたところ、AT1受容体刺激によるエンドサイトーシスは影響を受けなかったが、α1A受容体刺激によるエンドサイトーシスは認められなくなった。ユビキチン化の関与について、両受容体間で異なっている可能性が示唆された。抗ユビキチン抗体を用いた検討では、未だ明確な結論は得られていない。 2. Q1のC末端に存在するYXXΦモチーフ(クラスリン依存性エンドサイトーシスに関わるアダプター蛋白AP-2が認識する)に変異を入れて検討したところ、両受容体刺激の場合ともQ1蛋白のエンドサイトーシスが認められなくなった。 3. 初期エンドソーム・リソソーム・リサイクリングエンドソームの局在マーカーとQ1およびα1A受容体を同時に発現させ、エンドサイトーシス後の経路について検討した。刺激後60分間で、各小器官との共局在の可能性を示唆するデータが得られたが、詳細は今後の検討が必要である。 4. α1A受容体とα1B受容体では、受容体そのもののエンドサイトーシスに大きな違いが認められるため、α1B受容体についての検討を行った。これまでに得られたデータに関しては、α1B受容体の作用はα1A受容体とほぼ同様である。
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