研究概要 |
本研究では、新規神経ペプチドW,B(NPW、NPB)、その受容体であるNeuropeptideB/Wreceptor(NPB/WR1)の、ストレス下での自律神経機能調節における役割について、NPB/WR1欠損マウスを用いて解析した。NPB/WRIは扁桃体に存在することから、不安や恐怖といった感情を行動や自律神経系の反応と結びつける扁桃体から脳幹、視床下部への出力系(CRH系など)に対して、NPW、受容体であるNPB/WR1系が抑制性の役割を担っていると推測される。NPB/WR1欠損マウスは野生型マウスと比較して、尿中カテコールアミン量が増大し、心肥大程度が亢進していた。さらににアンジオテンシンII投与による心肥大病態モデルを作成した場合においても、NPB/WR1欠損マウスは、野生型マウスと比較して有意に心肥大が悪化した。急性ストレス下でのNPW-NPB/WR1系の役割を解明するため、ストレス負荷モデルを作成し、テレメトリーシステムを用いて、心拍数、行動量、体温を観察しながらNPB/WR1欠損マウス、野生型マウスにintruder(侵入者、C57/BL6Jマウス)を30分間接触させ、内分泌系のホメオスタシスの撹乱を行った後、それらのパラメータの変化を比較した結果、野生型と比較してNPB/WR1欠損マウスは、心拍数の定常状態への回復が非常に遅いということが判明した。(intruderとの接触2時間後の心拍数の増加率;WT:112.9±70.7%,N=5,NPB/WR1欠損マウス:125.1±69.5%,N=6,p<0.05,intruderとの接触3時間後の心拍数の増加率;WT:104.5±24.7%,N=5,NPB/WR1欠損マウス:114.6±58.8%,N=6,p<0.05)。
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