研究概要 |
本研究は、腎障害動物モデルにPPARαアゴニストを投与することで、糸球体・尿細管障害に対して、PPARα活性化が有益であるか検討し、ヒトへの臨床応用の前段階としての有益な基礎情報を得ることを目的としている。平成23年には、代表的なPPARα作動薬であるクロフィブラートが蛋白尿による尿細管毒性を抑制できることを発表した(Takahashi K et al. Toxicol Appl Pharmacol,252:237-49, 2011)。平成24年は、メサンギウム増殖性糸球体腎炎モデルであるラットThy1腎炎における糸球体障害に対するPPARαアゴニストであるクロフィブラートの効果を検証した。その結果、腎内のPPARα活性を維持するとNFκB抑制因子であるIκBαの発現が維持され糸球体腎炎の病勢が抑制されることを証明した(Hashimoto K et al. PPAR Res, 976089, 2012)。 これらの研究成果から、腎内のPPARα活性化は腎炎抑制に有益であることが証明されたが、フィブラート製剤は腎機能障害時に血中濃度上昇により尿細管毒性を起こす可能性があることが研究過程で明らかとなった。 そのため、平成24年度は、フィブラート以外のPPARαアゴニストとして、イルベサルタンのPPARα活性化作用についても検討した。1週間のイルベサルタン投与により、腎内PPARαのPPAR response element結合能が増加すること、また、PPARαの代表的標的遺伝子のmRNAが増加すること、そしてそのような変化がPPARα遺伝子欠損マウスにおいて認められないこと、この効果はフィブラートと同等であることを確認した。
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