本研究は網膜障害を再生治療することを最終目的とする。その前段階として実験的特異的網膜障害モデルを用い、奇形腫発現抑制手段を講ずる、あるいは奇形種発現のメカニズムを解明することにより臨床使用に耐えうる再生条件を構築する。さらに、マウスES細胞のみならず、ヒトES細胞、iPS細胞にても検討し、より安全性・倫理性の高い治療を目指す。初年度は(1):マウスを用いた正常網膜および障害網膜へのES細胞移植を試みた。D3 ES cellは129Svマウス由来で、D3 ES cellにelectroporation法でGFPを導入しD3 GFP ES cell(以下ES細胞)を樹立した。コントロール実験として正常マウスを用い、ES細胞を経硝子体的に移植した。マウス網膜にCoCl2を処理することにより視細胞障害モデルを、NMDAを処理することにより網膜神経節細胞障害モデルを作成した。(2)次いで奇形腫発現抑制処理を伴うES細胞移植を試みた。移植後ES細胞からの奇形腫発現を制御する目的で、ES細胞移植後、葉酸拮抗剤MTX処理による奇形腫発現抑制ならびに自殺遺伝子(herpes simplex virus-thymidine kinase transgene)導入ES細胞を樹立し、移植後の奇形腫発現の程度を検討した。結果、葉酸拮抗剤MTX処理による奇形腫発現抑制に一定の効果が認められた。この結果を踏まえ、ヒトES細胞のヌードマウスへの移植後MTT処理を試みた。MTT処理により、ヒトES細胞からの奇形種形成発現が有意に抑制された。(3)ES細胞の奇形種形成のメカニズムを明らかとするため、ES細胞の奇形種形成における微少環境の低酸素の影響を検討する。[in vitroでの検討]ES細胞を様々な酸素濃度下で三次元培養し、低酸素度とES細胞の奇形種分化の程度を解析する。これに関して現在詳細に検討中である。
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