研究課題/領域番号 |
22590242
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
江頭 伸昭 九州大学, 大学病院, 准教授 (80352269)
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キーワード | ストレス / オキサリプラチン / 末梢神経障害 / 機械的アロディニア / 三環系抗うつ薬 |
研究概要 |
(研究目的)パクリタキセルやオキサリプラチンなどの抗がん剤は、副作用として末梢神経障害を必発し、身体的苦痛を伴うため臨床上大きな問題となっているが、その発現機序は不明であり対策法も確立していない。一方、がん患者はがん性疼痛の他に、不安やストレス、うつ症状等による精神的な痛みを伴うことも多くあるが、身体的苦痛と精神的な痛みとの関わりについてはほとんど明らかにされていない。本研究は、がん治療におけるがん患者の痛みと情動、ストレスとの関係を解明し、それらの機序に基づいた対策法を確立することを目的とした。 (研究方法)体重200g~250gのSD系雄性ラットを使用し、ストレス負荷にはアイソレーションケージを用いた個別飼育、あるいは金網によってラットの体を一定時間固定する急性拘束ストレス負荷の二つを用いた。末梢神経障害は、von Frey試験を用いた機械的アロディニア(疼痛)の評価と、アセトン試験による低温知覚異常の評価にて行った。ラットへのオキサリプラチン(OXP,2mg/kg,i.p.)の投与は週2回、4週間行い、三環系抗うつ薬アミトリプチリンは単回投与、もしくはOXP投与開始から27日間の反復投与を行った。 (研究成果)個別飼育ストレスを負荷したラットでは、OXP投与による機械的アロディニアが非ストレス負荷群に比べて早く発現し、疼痛閾値の有意な低下が見られた。一方、急性拘束モデルでは、ストレス負荷による疼痛閾値の有意な低下は確認されず、ストレスにより痛みに対する影響が異なる可能性が示唆された。三環系抗うつ薬アミトリプチリンの反復投与は、OXPによる機械的アロディニアを有意に抑制したが、低温知覚異常に対する保護効果は示さなかった。加えて、アミトリプチリンの単回投与は、OXPによる機械的アロディニアならびに低温知覚異常のいずれに対しても、一過性に保護効果を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラットを用いたこれまでの研究から,ストレス負荷により抗がん剤誘発末梢神経障害に伴う痛みの感受性が増悪することが明らかとなり,またストレスの違いにより、その影響が異なる可能性が示唆された。加えて、三環系抗うつ薬アミトリプチリンが,抗がん剤誘発末梢神経障害に対する保護作用を示すことが明らかとなっており,本研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ストレスの違いにより,抗がん剤による末梢神経障害への影響が異なる点に注目し,ストレスを負荷するタイミング等についても臨床に即した検討を行う。加えて、保護効果が示された抗うつ薬の作用機序について,NMDA受容体に着目し,NR2Bサブユニットの発現変化等を検討することで有用性を詳しく評価し,対策法の確立を目指す。
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