我々の考案した血液脳関門再構成モデル(BBBキット)(特開2007-166915、特開2008-212062)を霊長類細胞で実現するために、サル脳からの効率的な脳毛細血管内皮細胞、脳ペリサイトおよびアストロサイトの分離抽出法を試み、これまでに我々が確立してきたラット初代培養細胞用の細胞採取方法を改変して内皮細胞の初代分離培養方法を確立した。典型例であるが、雄性3歳カニクイザルの摘出脳(湿重量62g)より原材料分として脳組織42gを得て、35gから脳毛細血管内皮細胞(5gは脳ペリサイトおよび2gはアストロサイト用)を抽出採取して初代培養を行ったところ、培養4日目で21.6x10^6の細胞数が得られた。2腔培養装置の単層培養で、培養1日目より血液脳関門(BBB)の機能的指標の1つであるタイトジャンクション(TJs)形成能を反映する径内皮電気抵抗(TEER)は、培養1日目で既に良質なTJs形成を示す148Ω・cm^2と高値で、以降順調に上昇し培養3日目で250Ω・cm^2に達した。サルとラット脳ペリサイトおよびアストロサイトの脳毛細血管内皮細胞へのBBB機能誘導作用の受容能力も十分に効率的で、2腔培養装置を用いた共培養系(BBBキット)でのTEER(培養4日目)は900Ω・cm^2を達成した。P-gp機能のTJsタンパクのであるclaudin-5とZO-1の内皮細胞にける細胞組織化学的発現も、強固なTJs機能を示す様相であった。サル細胞BBBキットで得られた薬剤のBBB透過性係数も、in vivoの脳内移行性と一致していた。本研究初年度の成果として、サル脳毛細血管内皮細胞の初代培養法を確立し、ラット脳ペリサイトおよびアストロサイトとの共培養で機能的なBBBキットを構築した。次年度は、サル型BBBキットの機能検定データをより深化させる。
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