研究概要 |
(1) SIRT1の神経細胞分化における役割:神経細胞は分化に伴いneuriteを伸長し、neuriteはアクソンとデンドライトを形成し他の神経細胞と神経回路を形成する。これまでの研究によりマウス胎児期の神経幹細胞のSIRT1をshRNAでノックダウンすると神経細胞への分化が阻害され、細胞のneuriteの形成が抑制され、皮質方向への細胞移動も阻害された(Hisahara et al. PNAS 105, 15599, 2008)。neuriteの伸長におけるSIRT1の役割をラットの褐色細胞腫由来のPC12細胞を用いて検討した。PC12細胞ではSIRT1が細胞質に発現し、その阻害は神経成長因子NGFによるneuriteの形成と伸長を阻害し、SIRT1活性化薬のresveratrolとNADはneuriteの形成伸長を促進した。SIRT1-siRNAによってもneurite伸長が阻害された。細胞質に存在するSIRT1の強制発現はPC12細胞の最も長いneuriteの長さを増させた。一方、細胞質にのみ存在するドミナントネガティブ型のSIRT1発現は1つの細胞から作られるneuriteの総長を短くした。核内に発現するSIRT1やドミナントネガティブ型の過剰発現はneuriteの形成や伸長に影響しなかった。細胞質にあるSIRT1がneuriteの形成や伸長に影響することが判明した(Sugino et al. FEBS Lett. 584, 2821-2826, 2010)。 (2) SIRT1の神経細胞移動における役割:SIRT1の神経細胞移動における役割を解明するために、GST融合蛋白質として発現させたSIRT1に結合する分子をラット脳から分離し、MASS解析によりそのいくつかを同定した。今後、それぞれの蛋白質とSIRT1との関連について検討する予定としている。
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