概要:心筋梗塞や心筋症など何らかの原因による左室駆出率(LVEF)低下に伴う従来の収縮期心不全に比べ、LVEFが保持されながらも機能不全に陥る拡張期心不全は、現時点において有効な治療法は確立していない。初年度は高血圧が重要なリスクファクターである拡張期心不全において、慢性高血圧から拡張期心不全へのラットモデルの作製に注力をした。 平成22年度実験:7-8週令のSDラットにアンジオテンシンII(200ng/min/kg)を注入した浸透圧ポンプを麻酔下に背部皮下挿入手術を施行し、アンジオテンシンII持続刺激環境を構築したところ、手術後3-5日目に80%のラットが収縮期血圧200mmHgに達した。慢性高血圧状態7日目に心臓超音波検査を施行し、およそ約1週間で拡張能の障害が出現してくることを確認した。ラットは慢性高血圧により約5日から7日目に求心性肥大を呈してくるものの収縮能に異常は認めず、組織ドップラーの計測によρE/e'(左心室拡張の指標、悪化すると上昇する。)の異常が第一所見として認められた。7日目の組織所見では、心筋そのものは正常であったが、間質における顕著な繊維細胞の増生が認められた。興味深いことに約2週間の高血圧状態では、収縮期不全の兆候も認められるようになった。この間に虚血を示す所見は認められず極めて興味深い。現在ミラーカテーテルを用いて血行動態上の拡張期心不全モデルとして確認を行っている。本年度はこのラットモデルを用いて消炎剤による拡張期心不全の予防効果の実験を施行予定である。2010年、奈良で開催されたInternational CVEMにおいて途中経過を゜Experimental model of diastolic dysfunction in non-genetic model of hypertension in rats.゜として発表した。
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