アルツハイマー病発症に関わる神経細胞死機序の解明とその治療法を確立することの二点を最終目的として、以下の成果を得た。 これまで我々はサイトカインの一つであるTGFbeta2がアミロイド前駆体タンパク質(APP)の細胞死誘導リガンドであることをこれまでに報告している。TGFbeta2/APP経路に関わる分子の同定を試みた。その結果、プレセニリン(PS)の結合分子として知られていたmodifier of cell adhesion (MOCA)がAPPとPSの細胞死シグナルを統合する鍵分子であることを発見した。この研究の成果は、「Biochemical Journal 442: 413-422 (2012)」にて発表した。 また、アルツハイマー病関連神経細胞死を抑制するペプチド性因子ヒューマニンの抗体を用い、内在性のヒューマニン活性を有する分子の同定を試みた。種々の検討の結果、calmodulin-like skin protien (CLSP)が同定された。CLSPはWSX-1/CNTFR/gp130の三量体からなるヒューマニン受容体に結合し、その下流であるJAK2/STAT3を介して神経細胞死を抑制するものと考えられた。この成果は、「Cell Death and Disease 4: e555 (2013)」にて発表した。 これらの成果は、現在までに進められているアルツハイマー病の創薬に新たな視点と戦略を示すものであると考えられる。
|