この研究では当研究室で作成したBH4生合成遺伝子、およびその再還元酵素遺伝子の改変マウスおよび培養細胞系を用いて、神経・精神疾患および循環器疾患の発生機序を明らかにし、プテリン代謝の制御による治療法・予防法の開発を目的としている。従来解析に使用していたPts-/-DPSマウスではホモ接合型を得るのに2段階の交配を必要とするため、Dhpr-/-,Spr-/-2系統のマウスを導入した。 (1)BH4欠乏マウスの黒質―線条体系の発達・加齢とジストニア(2)ドパミン神経終末でのBH4によるTH制御のメカニズムについての研究では、DNA arrayによりこれらのマウスの脳で発現の変化している分子を探索中である。またDhp-/-マウスにコレステロール負荷飼料を与えたところ、血漿および脳内のフェニルアラニンが低下し、これにともなって脳内ノルアドレナリン・セロトニン値が改善することを見出した。 (3)BH4欠乏マウスの血管機能、(4)高血糖および高脂血症状態におけるBH4欠乏マウスでの血管病変の進行に関する研究では、ポストカラム法によりBH4,BH2を直接定量する系をセットアップした。Dhpr-/-大動脈リング標本のアセチルコリン、Sodium Nitroprussideによる血管弛緩反応は、通常飼料飼育、1.25%コレステロール負荷飼料とも野生型と有意差はなかった(n=3~4)。Dhpr-/-の脳、肝臓ではBH4量は野生型と有意差がなく、BH2量が増加していた。血清BH2値も高値であった。しかし血管では逆にBH2は有意な差がなかったのに対し、BH4は約5倍に増加していた。この結果は、血管にはBH4/BH2の不均衡を是正する機構が存在することを意味する。 今後これらの現象のメカニズムをあきらかにするとともに、Spr-/-の解析も進める。
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