研究概要 |
私たちは、脳のバソプレシン受容体拮抗薬(V1a・V1b受容体)がモルヒネの耐性や依存を抑制するという興味深い現象を見出し、一部報告しました。22年度は、次の2点に焦点を当てました。(1)なぜバソプレシン拮抗薬がモルヒネの耐性と依存性を抑えるか。そのメカニズムの解明。 (2)ヒトの痛みにより近いものとするために、「脳での痛みの経路」に注目し、モデル動物を作製。 その研究成果を基に、「ヒトの疼痛緩和」の観点から、モルヒネの新たな使用法を提案し、かつ薬剤開発へと発展させます。 1.疼痛実験 動物を用いての痛みの評価は主に次の方法で行なった。熱刺激に対しては、Hot plate法やTail flick法で評価し、機械刺激に対しては、von Freyテスト法で行なった(代表者高野、分担者本多)。 2.バソプレシン受容体とモルヒネ耐性・依存との関連性 モデル動物を用いてモルヒネ連続投与による耐性を調べた。また、モルヒネの精神依存の評価はddYマウスを用い,条件性場所嗜好性試験(conditioned place preference, CCP法)で行なった。 本研究で、バソプレシン受容体(V1a,V1b)受容体に特異的なリガンドを用いて調べた結果、モルヒネ耐性にはV1bが、精神的依存にはV1aが関与していることが明らかになった。今回の実験結果から、バソプレシV1b受容体拮抗薬がモルヒネを含めた薬物依存症や抗不安薬の新たな治療薬になる可能性が示唆された(代表者高野、分担者本多、高崎)。 ヒトの痛みを考慮して、脳の帯状回に注目して、痛みの経路との関連を調べた。この研究は23年度に継続する。
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