研究課題
私たちは、脳のバソプレシン受容体拮抗薬(V1a・V1b受容体)がモルヒネの耐性や依存を抑制するという興味深い現象を見出し、一部報告しました。23年度は、次の2点に焦点を当てました。(1)使用頻度の高い抗がん剤の一つであるパクリタキセル誘発性疼痛モデル動物の開発と疼痛の仕組み。(2)ヒトの痛みにより近いものとするために、「脳での痛みの経路」に注目し、特に帯状回(ACC)に注目する。その研究成果を基に、「ヒトの疼痛緩和」の観点から、モルヒネの新たな使用法を提案し、かつ薬剤開発へと発展させます。結果:動物を用いての痛みの評価は、次の方法で行なった。熱刺激に対しては、Hot plate法やTail flick法で評価し、機械刺激に対しては、von Freyテスト法で行なった(代表者高野、分担者本多)。(1)パクリタキセル投与群で、アロディニアが生じた。ミノサイクリンはこのパクリタキセル誘発性疼痛を抑制した。パクリタキセル誘発性疼痛モデルにおいて、脊髄グリア細胞の発現が認められた。これらの結果から,ミノサイクリンによる抗アロディニア作用は,少なくとも神経障害初期でのミクログリア細胞の増殖と活性化の抑制に起因することが示唆された。こメカニズムの研究は24年度へ継続する(代表者:高野、分担者:本多)。(2)神経因性疼痛モデル動物を用いて、「脳での痛みの経路」について検討した。帯状回(ACC)のムスカリンM1受容体が関与していることが証明された。この2つの結果に関して、本研究テーマのモルヒネ受容体との関連を検討し、ヒトへの痛みへ適用する。
2: おおむね順調に進展している
痛みは多種多様で、その痛みの多くに注目して研究を進めている。現時点で、多くの基礎的な証拠が得られつつあり、おおむね順調に進行している。しかし、本論の「モルヒネの耐性・精神依存形成を抑制する」への関連性と結び付ける点で、やや遅れている。この分野は、共同研究者の京都大学と並行して進めている。
本論の「モルヒネの耐性・精神依存形成を抑制する」への関連性と結び付ける必要がある。この分野は、共同研究者の京都大学と並行して進めている。しかしながら、痛みの仕組みの基礎的部分の解明も大切で、この研究も推進していく。
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Pharmaceut.Bull.Fukuoka Univ.
巻: 12 ページ: 1-7
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