これまでに、申請者は1型Na^+/Ca^<2+>交換体(NCX1)の活性型変異体(PIP_2高親和性変異体)の心筋特異的高発現マウスが心筋Ca^<2+>代謝異常により拡張型心筋症様の心障害を呈することを見いだした。さらに、そのマウス心臓にPIP5Kα(PIP_2産生酵素)の抑制型変異体を導入すると、その病態が劇的に改善されることを観察した。これらの知見は、Ca^<2+>輸送系のPIP_2制御機構が心臓の構造と機能の維持に重要であることを示している。本研究では、これまでの研究成果をさらに血管系に発展させ、NCX1輸送体およびTRPCチャネルの血管特異的遺伝子改変マウス、PIP5K分子種欠損マウスおよび薬理学的ツールを用いて、動脈Ca^<2+>輸送系のPIP_2制御機構の血管機能および血管リモデリングにおける役割について検討した。本年度は、上記遺伝子改変マウスを作製し、tail cuff法によりこれらマウスの血圧を測定した。さらに、同マウスより摘出大動脈リング標本あるいは腸間膜細動脈(~100μm)を摘出し、各種アゴニスト(フェニレフリン、5-HT、アンジオテンシンIIなど)に対する血管反応性についても現在検討を行っている。さらに、NCX1とTRPC3との機能連関に対するPIP5Kの影響について、同マウスより血管平滑筋標本を作製し、NCX輸送体およびTRPCチャネルの特異的抗体を用いた蛍光抗体法によりこれらの膜局在を解析中である。
|