研究課題/領域番号 |
22590254
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
喜多 紗斗美 福岡大学, 医学部, 講師 (10461500)
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キーワード | 脂質キナーゼ / 血管リモデリング / 脂質代謝異常 / シグナル伝達 / 薬理学 |
研究概要 |
本研究では、NCX1輸送体およびTRPCチャネルの血管特異的遺伝子改変マウス、PIP5K分子種欠損マウスおよび薬理学的ツールを用いて、血管機能および血管リモデリングにおける動脈Ca^<2+>輸送系のPIP_2制御機構の生理的役割を解明することを目的とする。平成23年度は、血管のNCX1機能と病態について調べるため、種々の遺伝子欠損マウス(PIP5Kα、PIP5Kβ、NCX1、NCX2)を用いて各種病態モデルを作製した。その一つとして、NCX1ヘテロノックアウトマウス(NCX^<r/->)を用いてACTH誘発性高血圧モデルを作製したところ、NCX1^<+/->での血圧上昇は野生型マウスに比べて軽度であった。また、NCX阻害薬はACTH誘発性高血圧に対して顕著な降圧作用を示したことから、ACTH誘発性高血圧の発症にNCXlが関与する可能性が示された。また、D561A変異WNK4ノックインマウスは、偽性低アルドステロン症II型(PHAII)患者と同様に、高血圧、高カリウム血症、代謝性アシドーシス等の症状を示すことが知られているが(Cell Metab,2007)、この高血圧マウスにNCX阻害薬の処置あるいはNCX1遺伝子欠損の導入を施すと高血圧は有意に改善した。これらの結果は、NCX阻害薬がクッシング症候群やPHAII型患者の高血圧治療に臨床応用できる可能性を示している。今後、これら高血圧の発症機序として、PIP_2によるNCX1活性制御が関与するのかについて検討していく。さらに最近、申請者は上記遺伝子改変マウスを用いて血管カフ障害モデルを作製しており、新生内膜形成の組織学的解析、炎症性マーカー(ICAM1、VCAM1など)の免疫組織染色、病変部における活性酸化について現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホスホイノシチドの局在解析に蛍光プローブをin vitroで導入する予定にしていたが、導入効率が極めて低いので血管特異的な蛍光プローブ高発現マウスを作製することにした。そのため、ホスホイノシチドの局在解析実験が遅れているが、血管障害モデルの作製は順調に進んでおり、平成24年度中には解析結果が得られる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
種々遺伝子改変マウスを用いた血管障害マウスの作製を引き続き行う。血管特異的な蛍光プローブ高発現マウスは近日中に得られる予定であるので、本マウスを用いてホスホイノシチドの局在解析に取り組む。また、ACTH誘発性高血圧や偽性低アルドステロン症II型高血圧の発症にNCX1が関与するメカニズムについても、本マウスやNCX1のPIP_2制御部位を欠損した遺伝子改変マウスなどを用いて詳細に解析する。
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