研究課題
2型糖尿病における脳血管障害や認知機能障害などの中枢機能障害の発症に血糖調節脳機能不全が関与すると考えられる。本研究は、「疾患感受性細胞」として脳ペリサイトを捉え、本細胞が高血糖状態を感知し、サイトカインやケモカインなどの液性因子の放出を介して血液脳関門・脳神経細胞の機能障害を誘発することにより、糖尿病病態の形成・進展を担う可能性を追求する。本研究は糖尿病治療における新たな治療標的を提示しようとするものである。脳ペリサイトが高血糖状態下でTNF-α刺激に高感度に応答しMMP-9を分泌することを前年度明らかにした。本年度は、高血糖状態下における脳ペリサイトのMMP-9分泌に関する機構を明らかにする。TNF-α刺激によるMMP-9分泌に対するP-gp (P-glcorotein)阻害作用;脳ペリサイトのTNF-α誘発性MMP-9分泌は、P-gp阻害剤であるcyclosporin A,tacrolimusおよびverapamil併用により濃度依存的に減少した。これら阻害剤併用時の細胞内MMP-9蓄積量は濃度依存的に増加していた。これらの結果は、脳ペリサイトからのMMP-9放出機構においてP-gpが促進的に働いていることを示唆している。脳ペリサイトにおけるP-gp発見;Western blot法を用いて脳血管内皮細胞および脳ペリサイトのP-gp発現を確認した。脳血管内皮細胞と比較して発現量は低いものの、脳ペリサイトにもP-gpが発現していることが明らかになった。以上、本年度は、脳ペリサイトに発現が認められたP-gpが、高血糖状態下におけるMMP-9分泌機構に関与する可能性を提起した。
2: おおむね順調に進展している
糖尿病病態下での血液脳関門・脳神経細胞機能障害における脳ペリサイトの役割を明らかにするため、脳ペリサイトの血液脳関門障害因子であるMMP-9分泌における高血糖の影響について検討した。本年度は、高血糖病態下における脳ペリサイトMMP-9分泌機構にP-gpが促進的に関与することを明らかにした点を考慮すれば、研究の進捗状況としておおむね順調と評価できる。
高血糖病態下におけるMMP-9分泌機構についてさらに追究するとともに、記憶を担う海馬神経に着目し、その機能に対する脳ペリサイト由来液性因子(MMP-9を含む)の影響を明らかにする。これらの成果は「脳神経血管機構」の糖尿病病態における脳ペリサイトの役割の解明に繋がる「糸口」となる。
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