研究課題
2型糖尿病における脳血管障害や認知機能障害などの中枢機能障害の発症に血糖調節脳機能不全が関与すると考えられる。本研究は、「疾患感受性細胞」として脳ペリサイトを捉え、本細胞が高血糖状態を感知し、サイトカインやケモカインなどの液性因子の放出を介して血液脳関門・脳神経細胞の機能障害を誘発することにより、糖尿病病態の形成・進展を担う可能性を追求する。常態下では脳ペリサイトは自身が産生・分泌する液性因子を介して視床下部神経のインスリン感受性を亢進する一方で、高血糖状態下ではTNF-a刺激に高感度に応答して細胞外基質分解酵素MMP-9を分泌する。その分泌機構にP糖タンパク質(P-gp)が関与することを過年度までに明らかにした。これらの結果は脳ペリサイト由来液性因子は視床下部神経細胞機能を制御し、この異常化が糖尿病病態の形成・進展に関わる可能性を示唆している。本年度は、脳ペリサイトによる視床下部神経制御のさらなる解明に焦点を当て、脳ペリサイト由来液性因子について、摂食および血糖調節に関わる視床下部神経への作用を調べた。(1)脳ペリサイトは摂食調節分子レプチンおよび血糖調節分子インスリンをほとんど発現しないことをPCR法およびELISA法で明らかした。しかし、(2)脳ペリサイト培養上清中で視床下部神経を培養すると、視床下部神経細胞のAMPKリン酸化が減少し、STAT3のリン酸化が亢進していた。また、(3)視床下部神経細胞のAktのリン酸化が亢進した。これらの結果はそれぞれ、レプチンおよびインスリンを直接視床下部神経細胞に負荷したときと同様の結果であり、脳ペリサイトがレプチン様およびインスリン様物質を産生・分泌し、視床下部神経機能を調節する可能性を示唆する。以上、脳ペリサイトによる視床下部神経制御機構が存在し、この破綻が肥満・高血糖など2型糖尿病の基盤病態を加速・進展すると考えられる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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