研究課題/領域番号 |
22590256
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
小林 英幸 産業医科大学, 医学部, 教授 (40148953)
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研究分担者 |
森井 宏幸 産業医科大学, 医学部, 准教授 (60141743)
藤井 潤 九州大学, 医学研究科, 准教授 (60271441)
大原 直也 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (70223930)
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キーワード | ベロ毒素 / ワクチン / 生理活性ペプチド / 生体防御機構 / 脳微小血管 |
研究概要 |
腸管出血性大腸菌(EHEC)O157:H-をマウスに経口感染させ、同時にマイトマイシンCを腹腔内投与することによって、EHEC感染による急性脳症発症モデルを使って、ベロ毒素による脳傷害のメカニズムを細胞レーベルで調べた。ベロ毒素レセプター(Gb3)合成酵素mRNAの発現は、網様体と脊髄の血管内皮細胞と神経細胞に認められた。脊髄において前角の運動ニューロンが全長に渡ってcaspase-3が発現しており、アポトーシスが認められた。この結果により、O157感染マウスはベロ毒素により横隔膜を動かす横隔神経が傷害され、呼吸不能となって死亡したと考えられた。下肢麻痺症状も、脊髄前角の運動ニューロンの傷害によると考えられた。lipopolysaccharide投与マウスでは、マイクログリアが数多く活性化していたのに対して、O157感染マウスではコントロールマウスと同じ発現であった。このことから、マウス急性脳症発症マウスモデルでの中枢神経障害は、ミクログリアを介したものではなく、ベロ毒素そのものによって血管内皮細胞や神経細胞がアポトーシスを起こして発症することが明らかとなった。 ベロ毒素B-サブユニットを抗酸菌のアルファ抗原との融合タンパク質として発現する組換えBCGの作製を行なった。ベロ毒素2型B-サブユニットを産生する組換えBCGは以前にベロ毒素1型、2型B-サブユニットを同時に産生することを試みたが、2型は産生するものの、1型は僅かな産生が認められたのみで、改善の必要性が示唆された。 BCGから異種のタンパク質を産生するための新たな宿主-ベクター系の開発を行ない、抗生物質を選択マーカーとして使用しない系を作製することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ベロ毒素そのものによって血管内皮細胞や神経細胞がアポトーシスを起こして発症することを明らかにした。しかし、ベロ毒素による培養脳微小血管内皮細胞の障害に対する生理活性ペブチドの優位な効果を未だ見いだしていない,また、2つのタイフのベロ毒素Bサブユニットを産生する組換えBCGワクチンを作製したが、目的とするBサブユニットの産生量が必要と考えられる量に達していなかった。そのため、再作製をせざるを得ない状況で、進行の妨げとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
脳微小血管内皮細胞の培養条件を改善し、ベロ毒素の作用が強く表れる条件と生理活性ペフチドの作用が強く出る条件を探索する。さらに多種の生理活性ペプチドを用い、そのアンタゴニストの効果も調べる。
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