腎尿細管細胞におけるGATA転写因子を介した生体恒常性維持機構の解明

2010 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 22590260
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 森口 尚 東北大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (10447253)
• キーワード: 腎尿細管細胞 / GATA転写因子 / メサンギウム細胞 / AE1 / Aqp2 / 糖尿病性腎症

研究概要

本年度は以下の実験を実施した
1.GATA3条件つきノックアウトマウスを用いて、成体マウス腎臓でGATA3を欠失したマウスの創出に成功した。本マウスでは、重炭酸イオントランスポーター(AE1)および、水トランスポーター(Aqp2)の発現が著しく減弱していた。この結果はGATA3が腎尿細管細胞において酸塩基平衡と、体内水分量恒常性維持に貢献していることを強く示唆する。
2.GATA3条件つきノックアウトマウスの腎臓組織像を詳細に検討した結果、腎糸球体メサンギウム細胞の減少とメサンギウム領域の拡大を伴う組織変化を認めた。腎臓でのGATA3の発現パターンを詳細に調べた結果、GATA3は糸球体メサンギウム細胞にも強く発現することが解った。
3.腎臓でのGATA3発現細胞を用いたトランスクリプトーム解析の結果から、糸球体メサンギウム細胞に発現することが知られる血小板由来成長因子(Platelet-Derived Growth Factor,PDGF)-β受容体の発現が有為に低下していることを見いだした。糸球体では血管内皮細胞から分泌されるPDGFが、メサンギウム細胞のPDGF-β受容体に結合し、メサンギウム細胞の維持のために機能していることが知られている。GATA3はメサンギウム細胞でのPDGF-β受容体発現レベルの維持に寄与し、腎糸球体の恒常性維持に貢献しているのではないかと考えている。
4.糸球体メサンギウム細胞は、糖尿病性腎症において最初に障害を受ける細胞である。腎臓でGATA3を欠失したマウスが糖尿病性腎症誘導に対する脆弱性を示すか否か現在検討中である。

研究成果

• [雑誌論文] A NK and T cell enhancer lies 280kbp 3' to the Gata3 structural gene. (2011)
  • 著者名/発表者名: Hosoya-Ohmura S, Lin Y-H, Kuroha T, Rao A, Moriguchi T, Lim K-C,Hosoya T, Engel JD.
  • 雑誌名: Mol Cell Biol 巻: 印刷中
  • 査読あり
• [雑誌論文] Luminal aikalization attenuate superoxide production induced by Fatty acid-bound albumin in renal proximal tubular cells through Pyk2-dependent pathway. (2011)
  • 著者名/発表者名: Souma T, Abe M, Moriguchi T, Shibata E, Miyazawa N, Akiyoshi Y, Toyohara T, Suzuki T, Tanemoto M, Abe T, Sato H, Cowley AW, Yamamoto M, Ito S.
  • 雑誌名: J Am Soc Nephrol 巻: 印刷中
  • 査読あり
• [雑誌論文] Nrf2-deficiency creates a responsive microenvironment for metastasis to the lung. (2010)
  • 著者名/発表者名: Satoh H, Moriguchi T, Taguchi K, Takai J, Maher JM, Suzuki T, Winnard PT Jr, Raman V, Ebina M, Nukiwa T, Yamamoto M.
  • 雑誌名: Carcinogenesis 巻: 31 ページ: 1833-1843
  • 査読あり
• [学会発表] GATA2 function in Urogenital development (2011)
  • 著者名/発表者名: Takashi Moriguchi
  • 学会等名: Winter Camp of GCOE 2011 -The Cultivation for New Generation of Scientists-
  • 発表場所: Akiu, Sendai city, Japan
  • 年月日: 20110205-20110206
• [学会発表] GATA2 function in Urogenital development (2010)
  • 著者名/発表者名: Takashi Moriguchi
  • 学会等名: 9^<th> Japanese Biochemical Society (JBS) Bio-Frontier Symposium 2010. 5^<th> International Symposium on GATA factors.
  • 発表場所: Tohoku Univ, Sendai city, Japan
  • 年月日: 20101117-20101119
• [図書] Hematopoietic Stem Cell Biology (2010)
  • 著者名/発表者名: Moriguchi T, Suzuki M, Engel JD, Yamamoto M.
  • 総ページ数: 25
  • 出版者: Springer Science