研究概要 |
小胞体に局在するPP2Cεが、小胞体ストレスセンサーであるIRE1およびPERKの脱リン酸化を介して小胞体ストレスシグナルを制御するとの仮説を検証するために実験を行い以下の知見を得た。(1)HeLa細胞にIRE1をPP2Cα・PP2Cβ・PP2Cδ,PP2Cεと共発現させ、phos-tagアクルリアミドゲルを用いてIRE1のりん酸化を泳動度の違いで検討したところ、IRE1をPP2Cεと共発現させたときのみ脱リン酸化が観察された。一方、同様の実験をPERKを用いて行ったところ脱リン酸化は観察されなかった。また、PP2Cεに対するsiRNAを用いてPP2Cεの発現を抑制したところ、IRE1の活性化の結果起こると考えられるXBP1のスプラィシングが亢進していた。以上の結果からIRE1がPP2Cεにより特異的に脱リン酸化されていることが示唆された。 (2)われわれは以前、PP2CεがVAPA依存性にセラミド輸送タンパクCERTを脱リン酸化、活性化することを見いだしていた。この知見を踏まえ、HeLa細胞にIRE1、PP2Cε、VAPAを共発現しIRE1とPP2Cεの会合を検討したところ、両者の会合がVAPA依存性に観察された。VAPAの各種欠失変異体を用いて会合部位を検討したところ、VAPAとIRE1の会合部位はPP2Cεとの会合部位とは異なっていることが明らかとなった。以上の知見はPP2CεがVAPAを介して様々な基質を脱リン酸化することを示唆している。
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