細胞分裂において、細胞は複製した二組の染色体を二つの娘細胞に正確に分配しなければならず、この分配異常は染色体の不安定化を引き起こし、細胞死または細胞の癌化などにつながる。この細胞分裂の過程は多くのタンパク質により複雑かつ精密に制御されており、近年細胞分裂に関する複数のプロテオーム解析が行われ、今まで知られているよりもさらに多くのタンパク質が関与する可能性が示唆された。しかしながら個々のタンパク質についての解析は解析が進んでおらず、いまだ細胞分裂の全貌の解明には至っていない。本研究では細胞分裂に関与する新規タンパク質を同定する目的で、siRNAを用いたスクリーニングを行った。細胞分裂期に発現亢進やリン酸化がおこるタンパク質のデータベースを利用しその中から解析の進んでいない遺伝子約300を選び、それぞれのsiRNAをHeLa細胞に取り込ませ培養し、核と微小管を染色して多核などの細胞分裂異常を呈するものを選び出した。本研究ではその中からMink1に注目し、細胞分裂における役割を解析することとした。Mink1はN末端にキナーゼ領域、C末端にCNH(Citron Homology Domain)領域を有する約140kDaのセリンスレオニンキナーゼである。はじめにMink1に対するポリクローナル抗体を作製した。この抗体を用いてウェスタンブロットを行ったところ分子量約140kDaのタンパク質が検出され、siRNAの導入によりその発現は顕著に抑制されていた。また細胞を間期と分裂期に同調させると分裂期にMink1の見かけ上の分子量が上昇し、分裂期にリン酸化を受けることが推測された。さらにMink1を免疫沈降し複合タンパク質を質量分析にかけMink1結合タンパク質を複数同定した。
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