研究課題
当該年度において、昆虫細胞または酵母細胞により大量発現したアンジオテンシン2型受容体、ヒスタミン受容体及びニューロキニン受容体について、宿主の発現量はフローサイトメトリー法を用いた細胞表面上の発現頻度により見積もった後に精製を行った。これらの精製したGPCRはゲルろ過またはSDS-PAGE後にクマシー染色を行うことにより分子量が均一であることが認められた。さらにアンジオテンシン2型受容体について単体での結晶化を試みた。また、アンジオテンシン2型受容体及びニューロキニン受容体については抗体の作製の為にリポソーム化及びマウスへの免疫を毎週1回、計4回行った。免疫終了後、マウスの尾静脈より採血し、全血から得られた血清を用いてリポソーム化GPCRを抗原としたELISAを行い、免疫したマウスの抗体価のチェックを行った。抗体価の上昇を確認後、マウスから脾臓を摘出及び単一細胞へ分離し、ミエローマ(B細胞腫)細胞とポリエチレングリコールを用いて融合させハイブリドーマを作製した。その後、選択培地にて生き残った細胞を限界希釈法により96wellplateに播種しクローン化を行い、クローン化したハイブリドーマの培養上清を用いてクローンの選別を行う。GPCR特異的抗体の選別は、(1)リポソーム化GPCRを抗原としたELISAの反応性による1次スクリーニング、(2)ウエスタンブロットによる検出の可否、(3)ゲルろ過法による抗原抗体複合体形成の有無による2次スクリーニング、(4)各スクリーニングを経た抗体についてビアコアによる抗原抗体複合体の親和性のチェックにより最終的な抗体のセレクションを行った。この結果、アンジオテンシン2型受容体について立体構造を維持したGPCRを認識できる抗体を15種類、またニューロキニン受容体は24種類得られた。この内、抗体を結合させたことによるGPCRの安定性の変化をCPM試験およびフローサイトメトリー法により判定した。その結果、アンジオテンシン2型受容体に対する抗体について2種類、ニューロキニン受容体について1種類が細胞外を認識し且つGPCRの安定性が向上することが確認できた。また、アンジオテンシン2型受容体をLCP法にて結晶化した結果、微小結晶が得られた。この結晶についてSpring-8のマイクロフォーカスビームによる回折像の取得を試みたが有望な反射は認められなかった。今後、この結晶について反射が得られるような条件の検討を行う。
1: 当初の計画以上に進展している
アンジオテンシン2型受容体、ヒスタミンH1受容体についてはそれぞれ大量発現および精製系の確立により、結晶化に十分な量が得られた。また、アンジオテンシン2型受容体において、結晶化段階まで進んでおり、またその内いくつかの条件において微結晶が得られている。以上の点から、本研究課題の進展状況は当初の計画以上に進展していると考えられる。
アンジオテンシン2型受容体について引き続き結晶化を進めていく。当初の計画では本年度中に結晶化を行う予定ではなかったが、結晶化のみならず微結晶が得られたのは予想を超える嬉しい誤算であった。そこで、当初の計画では来年度は、精製が可能となったGPCRについて結晶化を行う予定であったが、来年度はアンジオテンシン2型受容体の結晶化および構造解析に最大限注力していく予定である。その他のGPCRについては可能な限り進めていく。
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