研究課題
作成した3種類の遺伝子欠損マウスのこれまでの解析結果をまとめる。1、Rcor1欠失マウスT細胞特異的にRcor1を欠失させたマウスより末梢ナイーブT細胞を分離し、Th1,Th2,Th17,iTregの各サブセットに分化させたところ、Th2,Th17,iTregにおいて、特異的サイトカイン産生やマスターレギュレーター遺伝子の発現が低下しており、コリプレッサーRcor1の直接作用としては説明されない。Rcor1の新たな作用を示唆するのか、これらの遺伝子に対して間接的に作用しているのか明らかにする必要がある。これらのすべてのサブセットの細胞増殖も抑制され、細胞周期制御への関与も示唆された。DSSにより誘導される腸炎モデルでは、Rcor1欠失により病態は悪化し、iTreg誘導の抑制によるものと考えられた。2、ZNF131欠失マウス胸腺でのT細胞分化の初期で欠失を誘導すると、DNからDPへの分化が強く阻害された。遺伝子発現パターンの解析からNotch経路への関与が示唆された。DPにおいて欠失を誘導すると胸腺でのT細胞分化には影響を認めなかったが、末梢のT細胞の強い減少が認められた。T細胞の胸腺から末梢への移動に関与する分子群の発現や、末梢のT細胞維持に関与するIL7の応答性にも変化は認められず、TCR経路に対する影響が認められた。3、GATA3欠失マウスこれまで報告されているT細胞特異的GATA3欠失マウスと同様の表現型を示したが、それに加えて、DP細胞の末梢での増大、リンパ球の皮膚への浸潤を特徴とする炎症性あるいは腫瘍性を示唆する病態を示した。DNA脱メチル化によるサイトカイン遺伝子発現制御に関して、最近報告されているDNA脱メチル化酵素候補遺伝子をT細胞においてノックダウンするためのベクター作成を完了した。またTh2サブセット分化誘導において、強く脱メチル化される領域のメチル化の状況を簡単に定量する実験法を樹立した。
1: 当初の計画以上に進展している
GATA3結合分子候補として同定したふたつの遺伝子、RCOR1およびZNF131についてT細胞特異的欠失マウスを作成したところ、どちらの分子も、T細胞分化と機能に関して、非常に重要であることが明らかとなった。GATA3のT細胞特異的欠失の種々の表現型の中で、同一となる部分と異なる部分が認められ、分子レベルでのGATA3との相互作用や、GATA3は関与しない機能を解明することが必要である。またGATA3自体の欠失において、これまで報告されていなかった病態を含む表現型を確認し、これがこれまで報告されていない遺伝子欠失方法によるためか、検討が必要である。GATA3の新たな機能の解明に結びつく可能性を示唆し、いくつかの論文として報告できるように研究を進める計画である。
Rcor1については、foxp3遺伝子の発現制御に関与する染色体領域と制御因子に対して、Rcor1がどのように相互作用しているのか、生化学的解析をおこなう。またマイクロアレーによる発現解析により、Rcor1は、他の遺伝子発現を介して作用しているのか検討する。ZNF131については、TCR経路のどの部分に関与するのか、また胸腺から末梢への移動や、T細胞の末梢における成熟にZNF131が関与するのか解析する。胸腺におけるT細胞分化においては、Notch経路およびpreTCR経路との関連を検討する。FLAGtagをGATA3遺伝子にノックインしてあるマウスのT細胞を用いて、Rcor1やZNF131とGATA3の相互作用を詳細に検討する。GATA3欠失マウスの病態について、炎症性か腫瘍性か、原因となる細胞群としてCD4CD8DP細胞が重要なのか、なぜDPT細胞が出現するのか、といった点について解析をすすめる。
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