I.マクロファージの組織内浸潤と走化性に対するFXIIIの影響 (1)リポポリサッカライド(LPS)投与後、心臓内のマクロファージ数が野生型マウスでは未投与時の2~3倍に増加するのに対して、FXIII-A欠損マウスではほとんど変化しない。 (2)単球系培養細胞THP-1の仔牛血清に対して示される走化性が、抗FXIII-A抗体を前処理することでさらに促進される。 (3)マウス腹腔マクロファージの走化性は、FXIII-A欠損マウスから採取したマクロファージのほうが野生型よりもやや強い傾向がある。 II.単球/マクロファージのケモカイン、細胞外マトリックス発現に対するFXIIIの影響 (1)心臓内の細胞外マトリックスのI型コラーゲン量は、野生型マウスではLPS投与で増加するのに対して、FXIII-A欠損マウスではほとんど増加しない。IV型コラーゲンおよびフィブロネクチンは野生型とFXIII-A欠損マウスで有意な差を示さない。 (2)マクロファージ化学誘引物質(MCP-1)の発現はFXIII-A欠損マウスにおいても野生型マウスとほぼ同等にLPSにより誘導される。 III.FXIII-A陽性マクロファージの生体内での役割 (1)FXIII-A欠損マウスが妊娠すると膣からの致死的な出血を引き起こすのに対して、血漿中のFXIII-Aのみが欠乏しているFXIII-B欠損マウスでは全く出血をおこさなかった。 (2)妊娠期のFXIII-B欠損マウスの子宮において、床脱落膜および子宮内膜にFXIII-A陽性マクロファージが多数存在した。 (3)FXIII-B欠損マウスから採取した単球をふくむ白血球画分を妊娠中のFXIII-A欠損マウスに投与すると、膣からの出血が明らかに軽減した。 (4)FXIII-A陽性マクロファージはin vitroにおいてフィブリンを架橋結合する能力を有した。 以上のことから、FXIII-A陽性マクロファージは妊娠期における止血に働くことが示唆された。
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