研究課題/領域番号 |
22590281
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
惣宇利 正善 山形大学, 医学部, 講師 (20292419)
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キーワード | XIII因子 / 架橋結合 / 炎症と血液凝固 / 単球 / マクロファージ |
研究概要 |
(1)細胞走化性の測定方法を再検討した上で、マウス腹腔内から採取したマクロファージの走化性を調べたところ、FXIII-A欠損マクロファージについて、仔牛血清(FBS)やmonocyte chemoattractan tprotein-1(MCP-1)に対する走化性が野生型より低い傾向が示された。同様に、骨髄細胞をinvitroで分化させたマクロファージについても、FXIII-Aを欠損した場合の走化性の低下傾向が認められた。しかしながら、いずれの場合も測定毎の誤差が大きく、有意差を得るまでには至っていない。 (2)細胞外マトリックスに対するFXIII-A陽性THP-1細胞の接着性を検討した結果、短時間においては1型コラーゲンに一過的に付着し、時間経過とともにIV型コラーゲン、フィブロネクチンへの付着性を増すことが示された。リポポリサッカライド(LPS)投与時の心筋において、各細胞外マトリックスタンパク質の変動が野生型とFXIII-A欠損マウスで異なることも見出されたことから、心筋内マクロファージの増減が、細胞外マトリックスの変動に左右されている可能性が浮上した。 (3)THP1細胞の走化性や接着性におけるFxIII-Aの関与を確認するため、siRNAによるFXIII-A発現の抑制を試みた。TRP-1に導入した場合、FXIII-AmRNAの減少は認められたが、FXIII-Aタンパク質は細胞内での安定性が高い故に消失せず、本法でのノックダウンは断念した。 (4)マウス血液中の血球数を計測したところ、FXIII-A欠損マウスでは野生型マウスと比べて白血球が多い傾向にあり、なかでも単球については、有意であった。また、骨髄のFACS解析において、FXIII-A欠損マウスではCD11b陽性細胞が野生型より多い傾向が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LPS投与時の心筋内へのマクロファージ浸潤がFXIIL-A欠損マウスで低下している理由を解明する目的において、単球/マクロファージの走化性のみならず、組織内の細胞外マトリックス産生の変動が原因の1つとして新たに浮上したことから、目的の達成に向けた前進と考えられる。また、血球分化への関与といった、本研究の目的に関連した新たな知見も見出しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
マクロファージ走化性を測定する精度をさらに高めて、走化性に対するFXIII-Aの関与について結論を見出す。血管内皮への単球の付着・透過についても、FXIII-Aの有無の効果を検討する。また、心筋での細胞外マトリックス産生におけるFXIII-Aの効果について、そのメカニズムを追究する。さらに、FXIII-Aの血球分化への関与についても、主にin vitroでの検討を開始する。
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