研究課題/領域番号 |
22590282
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
内田 和彦 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (90211078)
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研究分担者 |
島居 徹 筑波大学, 医学医療系, 教授 (80235613)
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キーワード | プロテオミクス / 分子標的薬 / Wntシグナル / 遺伝子発現解析 / 質量分析 / 腎明細胞がん / 肝細胞がん |
研究概要 |
我々のこれまでの研究で明らかになったWntシグナルのモデュレータタンパク質が、どのようなメカニズムで細胞のがん化とがんの悪性化を引き起こすのかを明らかにする。これまで蓄積したゲノム・プロテオミクス(オミックス)技術を用いて、これらの因子と相互作用するタンパク質やこれらの因子の下流で発現の変化する新規の遺伝子やタンパク質を同定することで、がん化とがんと悪性化についての新しい分子機構を明らかにする。本研究では、がんの悪性化におけるWntシグナルの前述のモデュレータタンパク質が、どのようにシグナルを制御し、がん化とその悪性かにかかわっているかについて阻害剤による効果の解析やプロテオミクス技術を駆使した新規分子標的タンパク質やバイオマーカーの同定を行った。今年度は、これまで解析したIdaxに加えてCTHRC1タンパク質の解析を行った。CTHRCIに対するポリクローナル抗体を作成し、肝細胞がん組織における発現をウェスタンブロット法と免疫組織化学染色を行った。その結果、肝細胞がん組織に高い発現が認められた。さらにCTHRC1に対するsiRNAを作成し、肝細胞がん複数種類に導入し、cTHRclノックダウンを行った。また過剰発現ベクターを構築して同様に肝細胞がんへ導入した。これらのノックダウンならびに過剰発現の細胞増殖能の変化、インベージョンアッセイなどによる悪性化への関与などの機能解析を行った結果、CTHRC1ノックダウンにより細胞増殖ならびに細胞浸潤が抑制された。培養細胞への抗CTHRCI抗体の添加は効果がなかった。以上の結果から、膜表面下CTHRC1が肝細胞がんにおける抗がん剤の分子標的候補になる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで腎がんならびに肝細胞がんの分子メカニズムの研究において、Wntシグナルのモデュレータタンパク質であるIdaxとCTHRC1についての働きはまったくわかってなかった。本研究において、とくに抗がん剤の分子標的になりうるCTHRC1の肝がんにおける機能解析ができた意義は大きい。オミックス解析ということから、当初計画の達成目標の分子標的の機能解析が散漫になりがちであったが、研究期間に確実なターゲット分子に絞り込むことが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
最終的にWntシグナルのモデュレータタンパク質が抗がん剤の分子標的になりうることを示す必要がある。当初動物実験までは計画していなかったので、研究機関終了後ただちにマウスを用いた抗がん作用の検証実験を開始できるように、成果をとりまとめたい。これまでの研究で培養細胞を用いた実験を、細胞株や他のがん細胞株を用いて実施するとともに、タンパク質解析に質量分析を用いた詳細検討を加えてモデュレータタンパク質CTHRC1などの機能解析を行いたい。
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