研究概要 |
脂質メディエータースフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は,動脈硬化の発症に関与する血管内皮、平滑筋、マクロファージなどのさまざまな細胞種に対して、多彩な作用をおよぼす生理活性スフィンゴ脂質メディエーターである。研究代表者はこれまでに、S1P2型受容体(S1P2)のノックアウトマウスが、ApoE^<-/->遺伝背景+高コレステロール負荷動脈硬化モデルにおいて,粥状動脈硬化の著しい改善を呈すること,すなわちS1P2受容体が催動脈硬化作用を有することを初めて発見した。平成22年度の研究では,単球/マクロファージなどの骨髄由来細胞に発現しているS1P2受容体が粥状動脈硬化発症に関与しているかどうか,S1P2受容体作用および血液-組織間のS1P濃度勾配が単球/マクロファージの遊走や動脈硬化病変に及ぼすかどうかについて検討した。S1P2^<-/->マウス骨髄を移植したS1P2^<+/+>マウス(ApoE^<-/->遺伝背景)では、S1P2^<+/+>マウス骨髄を移植したS1P2^<+/+>マウスに比較して、粥状動脈硬化病変が約50%低下した。マクロファージのS1P2受容体はS1Pの濃度勾配に対して化学遊走反発作用を示した。S1P2^<-/->マクロファージを高コレステロール食餌で飼育したApoE^<-/->マウスの尾静脈内投与したところ、S1P2^<-/->マクロファージの粥状動脈硬化病巣への集積はS1P2^<+/+>マクロファージと比較して低下していた。以上の結果より、粥状動脈硬化においてはマクロファージに発現するS1P2が重要な役割を果たすことが示された。
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