研究概要 |
平成24年度は生体内で主なS1P産生酵素であると考えられているSphK1に着目し、動脈硬化モデルマウスApoEノックアウト(KO)マウスとSphK1トランスジェニック(Tg)マウス(Cardiovasc Res 85,484-493,2010)およびSphK1ノックアウト(KO)マウスを交配させ、作出したマウスを用いてSphK1の動脈硬化に及ぼす効果について検討した。①ApoEKOマウスとSphK1Tgマウスを交配させ、作出したマウスを用いて高コレステロール食負荷で誘発される動脈硬化巣におけるSphK1の過剰発現の効果について検討した。作出したマウスに16週間高コレステロール食負荷後、大動脈の動脈硬化巣をoil Red O染色で評価したところ、ApoEKO/SphK1TgマウスではApoEKOマウスと比較して、大動脈の動脈硬化巣面積が増加した。②ApoEKOマウスとSphK1KOマウスを交配させ、作出したマウスを用いて高コレステロール食負荷で誘発される動脈硬化巣におけるSphK1の遺伝子欠失の効果について検討した。作出したマウスに16週間高コレステロール食負荷後、大動脈の動脈硬化巣をoil Red O染色で評価したところ、ApoEKO/SphK1KOマウスではApoEKOマウスと比較して、大動脈の動脈硬化巣面積が減少した。③ApoEKO/SphK1TgマウスおよびApoEKO/SphK1KOマウスから腹腔マクロファージを調製し、変性LDLの取込みをDiIで蛍光標識したアセチルLDLを用いて検討した。検討した結果、ApoEKOマクロファージと比較してApoEKO/SphK1TgおよびApoEKO/SphK1KOマクロファージでアセチルLDL の取込みには差が認められなかった。以上の結果から、S1P産生酵素であるSphK1は動脈硬化に対して促進的に作用すると考えられた。
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