研究課題/領域番号 |
22590285
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
定 清直 福井大学, 医学部, 教授 (10273765)
|
研究分担者 |
千原 一泰 福井大学, 医学部, 講師 (00314948)
竹内 健司 福井大学, 医学部, 助教 (40236419)
|
キーワード | C型肝炎ウイルス / シグナル伝達 / 糖尿病 / プロテオーム解析 |
研究概要 |
(1) HCV蛋白質を発現するB細胞の実験系の確立とHCV蛋白質によるチロシンリン酸化反応への影響:ヒトB細胞を用いてHCV蛋白質の発現系を構築し、細胞内シグナル伝達機構、特に蛋白質チロシンリン酸化反応への影響を網羅的に解析する目的で、HCVの非構造タンパク質の一つであるNS5Aを安定発現させ、肝臓の細胞同様にチロシンキナーゼSykに対する影響の有無を解析したが、当初の予想に反し、影響は認められなかった。現在はマウスモデルを用いた更なる解析を進めている。 (2) プロテオーム解析:既に肝細胞についてプロテオーム解析を開始しており、HCVの複製に関与すると考えられる分子を網羅的に同定することに成功した。特に細胞内のエネルギーセンサーであるAMPK活性化に関与する酵素ATICの発現に変導を見いだし、更なる解析を進めた。 (3) HCVの複製機構の分子メカニズムの解析:AMPKは細胞内AMP濃度依存的に酵素活性が上昇し、糖新生、脂肪酸合成、コレステロール合成を抑制することが知られている。またAMPKは経口糖尿病治療薬メトホルミンの標的分子である。AMPKの活性化薬と阻害薬を用いた解析により、HCVのウイルスゲノムの複製は、AMPKの活性化により負に調節されていることを見いだした。一方、培養液中のグルコース濃度を高濃度から正常域に下げることや、糖尿病治療薬であるメトホルミンの添加により、AMPK非依存性にHCVの複製が抑制されることも明らかとなった。糖尿病治療薬メトホルミンはミトコンドリアComplex 1の機能を阻害しATP産生量を減少させることが知られている。これらのことは糖尿病のコントロールや経口糖尿病薬の投与がHCV複製を抑制することを示しており、新たなHCV治療に対する道を開くものであると考えられる(投稿中)。AMPKは抗HCV薬開発の新たなターゲットであると考えられる。
|