研究課題
(1)HCV蛋白質を発現するB細胞の実験系の確立:昨年度の課題であった、HCV蛋白質(非構造タンパク質のNS5A)を安定発現させたB細胞株を樹立した。(2)HCV蛋白質とB細胞シグナル伝達分子の相互作用:B細胞をpervanadate(チロシンホスファターゼの阻害薬)で処理すると、HCV蛋白質NS5Aがチロシンリン酸化されることを見いだした。その会合蛋白質を種々のSH2ドメインのGST融合蛋白質を用いたpulli-down実験により検索したところ、チロシンキナーゼFynのSH2ドメインが劇的に会合することを見いだした。両者の会合はFynのSH2ドメインの176番目のアルギニンをリジンに置換することで消失することから、NS5Aのチロシンリン酸化チロシンを介するものと考えられた。またNS5Aの側についてはアミノ末端側の領域が会合には関与しないことが、変異体を用いた解析から明らかとなった。蛍光標識抗体を用いた解析やショ糖密度勾配遠心法による解析により、両者が細胞膜で会合していることや、far-western法により、直接会合していること、さらにNS5Aが共発現することによりFynの自己リン酸化が更新していることがそれぞれ明らかとなった(投稿中)。これらの結果はHCV感染によるBリンパ腫発症の病態解明の糸口となると考えられる。(3)HCVの複製機構の分子メカニズムの解析:昨年度の解析結果により、HCV感染により発現量が変化する蛋白質として、AMPKの活性化に関与する酵素ATICが同定された。今年度はAMPKの活性化制御や細胞培養液中のグルコース濃度の変化に対するHCV複製について解析した結果、糖尿病のコントロールや経口糖尿病薬の投与がHCV複製を抑制することを明らかにし、論文を発表した(Nakashima et al.2011)。
2: おおむね順調に進展している
HCV蛋白質と相互作用するチロシンキナーゼを同定することに成功し、その機能を明らかにすることが出きたため。
今年度見いだした現象について、今後は詳細な分子メカニズムを明らかにすることや、疾患発症のメカニズムとの関連を明らかにすることが必要である。また、単一の蛋白質の発現系だけではなく、HCVゲノム全体を用いた感染実験系を新たに導入することが重要であると考えられる。
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10.1111/j.1348-0421.2011.00382.x
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