研究課題/領域番号 |
22590290
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
遠藤 仁司 自治医科大学, 医学部, 教授 (50221817)
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キーワード | ミトコンドリア / プロヒビチン / 性ホルモン / プロテオーム / 核-ミトコンドリア連関 / 脂肪分化 |
研究概要 |
当該研究の目的は、PHBタンパク質が性ホルモン依存的に核-ミトコンドリア間を移行するという新規な現象を踏まえ、この現象によりもたらされると予測されるミトコンドリア活性調節および核内における転写活性調節の二つを解析により、性ホルモンが肥満等の代謝調節に関与する分子メカニズムを生化学的に解明することである。 平成23年度は、PHB2がエストロゲンによって細胞内局在を変化させるという現象の生理的意義を検討するために、脂肪前駆細胞3T3-L1細胞を用いた。当該細胞は、PHB2やエストロゲンレセプターを内在性に発現している。まず、当該細胞にエストロゲンを添加し脂肪分化させたところ、エストロゲンを添加しないときに比べ脂肪分化が抑制された。また、内在性のPHB2を染色する抗PHB2抗体を作製し、当該細胞の免疫染色を実施したところ、エストロゲン非存在下ではPHB2は主にミトコンドリアに局在したが、エストロゲン存在下ではPHB2の一部は核に移行した。脂肪分化のマスター遺伝子であるPPARγと上流にPPREを有するルシフェラーゼ遺伝子を用いてルシフェラーゼアッセイを行ったところ、PHB2はPGC1aコアクチベータ存在下で転写活性を抑制した。PHB2とPGC1aは直接結合することをGST pulldown assayにて証明した。以上から、核に移行したその結果PHB2は直接PGC1aに結合してPPARγの転写活性を抑制すると考えられた。その結果、脂肪分化を抑制すると考えられた。 以上の仮説を証明するために、エストロゲン非依存的に核に移行するPHB2変異体(PHB2C)を、レンチウイルスベクターを用いて3T3-L1細胞に導入し、脂肪分化の誘導を実施したところ、PHB2C導入細胞では、脂肪分化が抑制された。以上から、核移行型PHB2はPGClaを介してPPARγの転写活性を抑制することで脂肪分化を抑制することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)エストロゲン存在下でのPEB2の核内移行が、脂肪前駆細胞で確認できたこと、(2)核移行型PHB2の導入により、脂肪分化が抑制されたことを明らかにしたことにより、PHB2の核-ミトコンドリア間の移行が、肥満に関与することを実験的に示した。当初の目的にほぼ到達している。さらに、PHB2の作用分子を明らかにし、脂肪分化抑制の分子メカニズムを解明したことは、当初の計画以上である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、この分子機構を、動物モデルを用いて実証する。特に、閉経後肥満のモデルマウスを用いてその分子機構を解明する予定である。
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