研究概要 |
我々は哺乳動物におけるシステイン生合成系の生理的役割とその破綻による病態を,システイン生合成に必須のTranssul furationを担う二つの酵素であるCystathionine beta-synthase(CBS)とCystathionine gamma-lyase(CTH)それぞれの遺伝子改変マウスを利用して解析している。本課題では,システイン欠乏餌を投与した際に見られるCTH欠損マウスにおける病態(急性骨格筋萎縮)について詳細に解析した。同マウスに通常の約43%のシステインを含む餌を投与すると骨格筋萎縮症を約2週間程度で発症し,3週齢前後で死亡した。筋萎縮が群性でなく孤発性である点,主な焦点が遠位筋ではなく近位筋である点,肝臓と骨格筋におけるアスパラギン合成酵素遺伝子の発現誘導とグルタチオン含量の低下,および筋原繊維の断面積の減少とAutophagyに関わるLC3/p62の細胞内蓄積を伴っている点,線維束性攣縮が見られない点などから,神経原性ではなく筋原性であると考えられた。おそらく全身性のシステイン欠乏のためにタンパク質含量の豊富な骨格筋がAutophagyにより自己分解したためと思われる。CBS欠損マウスとCTH欠損マウスは同じく高ホモシステイン血症を示すが,前者が高メチオニン血症も呈するのに対し後者は正常メチオニン濃度であった。従って高メチオニン血症を検出する現行の新生児マススクリーニングではCBS欠損によるホモシスチン尿症患者は検出されるが,CTH欠損によるシスタチオニン尿症患者は検出されない可能性が考えられた。本研究成果はマススクリーニングで検出されないシスタチオニン尿症患者がシステイン摂取を制限された場合に筋萎縮症が発症する可能性を提示する。
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