P62の選択的オートファジーは、オートファゴソーム膜タンパク質LC3と相互作用するためのLC3認識アミノ酸配列(DDDWTHL)を必要とし、このアミノ酸配列に変異を持つp62はオートファゴソームへの取り込みが著しく低下されることが細胞内での発現実験で確かめられている。構造予測モデルからLC3のホモログであるGATE-16も、LC3と同様にp62と結合しうることが示唆されており、リコンビナントを使ったプルダウン実験では、p62がGATE-16とも相互作用することが実証されている。しかし、P62のオートファゴソームへの取り込みに、LC3だけでなくGATE-16も関与しているかは明らかにされていない。P62の選択的オートファジーのメカニズムを解明するために、今回、LC3認識アミノ酸配列をペプチド合成し、LC3とGATE-16の精製タンパクを用いた等温滴定熱量測定を行った。その結果、p62とLC3の結合は、P62とGATE-16との結合に比べ、結合定数が高く、自由エネルギー変化、エンタルピー変化の熱力学パラメータも結合に有利であることを示していた。以上の結果は、細胞内においてもLC3とp62の結合体が優先的に生じることを示唆しており、大部分のp62はLC3との結合を介してオートファジーで分解されていると考えられる。LC3結合タンパク質にはp62以外にもオートファジーの選択的基質と予想されるタンパク質としてNbr1、Alfyなどが知られている。細胞内で過剰発現させたLC3とGATE16に結合するタンパク質を調べたところ、Nbr1やAlfyはLC3よりもGATE-16との親和性が高かった。以上の結果から、オートファゴソームに局在するLC3やGATE-16のタンパク質は、オートファゴソーム形成の役割に加えて、基質受容体として機能することで、選択的オートファジーの基質選択に深く関ると予想される。
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