研究概要 |
1.肝障害モデルマウスの病態におけるビタミンD受容体(VDR)の役割を明らかにするため、総胆管結紮(BDL)による胆汁鬱滞モデルの解析を行い、昨年度までに肝臓における炎症・代謝関連の遺伝子発現におけるVDRの影響は限定的であること、VDR欠損マウスの下部小腸においてNK-κBを抑制するIkBαの発現が増加しており、BDLによるインターロイキン-6の遺伝子発現が抑制されていることなどを見出していた。これらの知見を原著論文として報告した(Ishizawa et al., PLoS ONE 2012)。 2.肝臓免疫系細胞の解析を進めた。活性型ビタミンD3は、Kupffer細胞を含む肝臓単核球におけるリポポリサッカライド依存性のTNF、IL-12p40、IL-6遺伝子の発現誘導を抑制しなかった。これまでの報告と異なる結果であり、薬剤の濃度や処理時間などの実験条件のさらなる検討が必要と考えている。野生型マウスとVDR欠損マウスとの比較において、肝臓単核球におけるKupffer細胞、T細胞、B細胞の数に差は認めなかった。VDR欠損マウスにおいて、NKT細胞、iNKT細胞が増加していた。NK細胞の数には差はなかったが、VDR欠損マウスにおいてCD69陽性の活性化NK細胞が増加していた。 3.以上の結果と、VDRが肝臓よりも腸管に多く発現していること、活性型ビタミンD3投与による標的遺伝子変化は、肝臓よりも腸管においてより顕著に見られること、非ビタミンD性のVDRリガンドであるリトコール酸は腸内細菌によって産生されるがほとんど吸収されないことなどの知見からVDRの腸管機能の解析へ発展させた。ビタミンDの作用部位は上部腸管であるがリトコール酸は下部腸管であることを見出した。VDRを介する腸管・肝臓の免疫と代謝調節といった今後の研究に発展させる予定である。
|