研究課題/領域番号 |
22590297
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
朝日 通雄 大阪医科大学, 医学部, 教授 (10397614)
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キーワード | 糖鎖 / 循環器・高血圧 / 糖尿病 |
研究概要 |
σGlcNAcという糖鎖については、近年、セリン、スレオニンキナーゼのリン酸化部位に競合して、さまざまなタンパク質を修飾することから、細胞内シグナル伝達に重要な役割を演じていることが報告されている。心臓の機能は、様々なタンパク質のリン酸化で制御されているので、そのリン酸化にσGlcNAcが影響しているとすると、σGlcNAcが心機能の新たな調節因子ということも考えられたため、その詳細を検討した。本研究はσGlcNAcによるカルシウムシグナルタンパク質の制御およびその心機能への影響を検討する目的で行っているが、心機能の制御に中心的役割を演じている筋小胞体タンパク質の一つであるボスホランバンがσGlcNAcによる修飾を受けること、またその修飾がリン酸化を抑制していることを証明した。さらに、ホスホランバンのリン酸化の抑制あるいはσGlcNAc化そのものにより、心機能が低下している可能性が示唆され、糖尿病性心筋症の1つのメカニズムと考えられた。σGlcNAc転移酵素であるOGTの過剰発現マウスを作製したので、現在in vivoでの解析中である。その他、心筋に発現しているイオンチャネルやトランスポーターに関してもσGlcNAc修飾や修飾部位について解析中である。 また、マウスの低酸素負荷モデルで、心筋においてσGlcNAc転移酵素であるOGTの発現が亢進し、タンパク質のσGlcNAc化の増加が認められた。今後は、低酸素負荷におけるタンパク質のσGlcNAc化の意義について分子レベルで解明していく予定である。 σGlcNAcという糖鎖は、糖尿病、アルツハイマー病などの病態で増加し、それらの病態と深く結びついていると考えられるが、その分子メカニズムはよくわかっていない。本研究は、その分子メカニズムを解明しそれらの治療の基礎研究という点で意義があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
心筋収縮タンパク質であるホスホランバンに対する0型糖鎖の影響については明らかにしたが、イオンチャネルに対するN型、0型糖鎖による修飾の影響の検討については予定より遅れている。心筋収縮タンパク質に対する解析に時間を取られたためと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
σGlcNAc転移酵素であるOGTの過剰発現マウスを作製したので、in vivoでの解析を今後行っていく予定である。まずはホスホランバンのin vitroのデータに関して、このマウスとホスホランバン欠損マウスの掛け合わせによりin vivoで実証していく予定である。また、低酸素負荷におけるタンパク質のσGlcNAc化の意義については、心筋細胞の生存シグナルなどとの関わりなどを中心に解析していく予定である。
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