研究課題/領域番号 |
22590298
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研究機関 | 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
島 礼 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 部長 (10196462)
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研究分担者 |
山下 洋二 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 特任研究員 (30420045)
渡邊 利雄 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究科, 教授 (60201208)
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キーワード | キネシンモーター / KIF3 / ホスファターゼ / 2重基質ホスファターゼ |
研究概要 |
KIF3モーターは、キネシンモーターの1つであり微小管上を+端に向かって動く微小管依存性モーターである。その構造は、微小管上の上を走る「2本足」(KIF3AとKIF3Bのヘテロダイマー)と、運搬物を載せるKAP3からなる三量体である。重要な機能をもつ運搬物を微小管に沿って輸送することにより、有糸分裂の際の紡錘糸や染色体の動きの制御に重要な働きを持つことが考えられている。一方でノックアウトマウス等の解析から、これらの機能不全が、癌や繊毛病と総称される症状の原因となる事が示唆された。しかし、リン酸化による制御はほとんど明らかになっていない。 我々は、これまでに、新規の2重基質ホスファターゼ遺伝子の単離とそれらの機能解析を行ってきた。その1つのDUSP26が、脳腫瘍のグリオブラストーマにおいて著しい発現の減少が認められたことから、脳腫瘍の悪性化との関連が示唆された。そこで、基質を同定することを目的として、酵母two-hybrid法を行った。その結果、DUSP26が直接KIF3Aに結合することを見いだした。一方、さらに、KIF3Aを介してKAP3を脱リン酸化することを明らかにした。 腫瘍化におけるKAP3のリン酸化-脱リン酸化の意義を明らかにするため、KIF3モーターのカーゴと考えられているN-Cadherinおよびβカテニンの細胞内局在を調べたところ、DUSP26によりN-Cadherinおよびβカテニンが細胞-細胞の境界に集積することが明らかとなった。一方ホスファターゼ活性をもたないDUSP26においては、それらの集積が弱まっていた。従って、DUSP26によるKIF3モーターの制御が、発がんの抑制に重要であることが示唆された。本計画は、その詳細を明らかにすることを目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度の研究が遅れた1つの理由は東日本大震災による影響である。申請者の所属する宮城県立がんセンター研究所は宮城県名取市にある。名取市は震度6強の揺れの後、津波による甚大な被害があった。幸い、津波は当研究所の東方約3キロ地点で止まったため研究施設に対する津波被害はなかった。しかし、研究グループの主要メンバーは、震災後直ちに、医師として溺死遺体検視や避難所での救護活動に専念し研究がストップした。また、地震による申請者の研究部への直接被害は以下の通りである。 (1)研究試料の滅失:停電または破損によりdeep freezerに保管中のRNAおよびタンパクの損失。 (2)マウスの死亡:マウス飼育装置の倒壊は免れたが、停電と低温、給水と給餌ができなかったことから、遺伝子改変マウスが死亡した。
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今後の研究の推進方策 |
KAP3のリン酸化を標的とする治療開発に向けた研究 将来KAP3を対象とする治療開発を進めるためには、ホスファターゼ側からの解析では不十分である。KAPをリン酸化するキナーゼを同定し、その阻害剤を用いた治療開発を進める。 KAP3関連タンパクを標的とする治療開発に向けた研究 KAP3は、複合体を形成して機能を発揮する。したがって、KAP3と結合しているタンパクの異常が癌化の原因となることが考えられるが、これまでその点に関する解析は行われてこなかった。今後は、KAP3関連タンパクである、KIF3A,KIF3Bに関しても、癌組織において、その発現レベルや遺伝子異常の有無を調べる。 マウスを用いた研究 培養細胞でノックダウンの手法を用いた実験は一段落した。マウスの実験は、震災のため大きく遅れをとったので、仕事の中心をマウスの実験にシフトし、早く震災前の状況に復帰させる。
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