研究概要 |
ダウン症患者由来線維芽細胞4株(GM02767,AG05397,AG06872,AG08942)から、レトロウィルス法(4因子および3因子)により樹立したiPS細胞株(DS-iPS細胞)について、トランスジーンの発現消失および未分化性の検証(未分化マーカーの発現、胚葉体形成能、テラトーマ形成能)を行った。ヒトES細胞様形態を示し、継代培養可能であった48クローンから未分化性の高い6クローンを選別し、神経分化能を評価した。正常線維芽細胞から同時に樹立した正常iPS細胞クローンについても未分化性を検証し、3クローンを対照として用いた。神経分化誘導はPA6細胞との共培養法(SDIA法)を主に用いた。評価したDS-iPS細胞6クローン、正常iPS細胞3クローン、全てが神経前駆細胞マーカーであるNESTIN陽性を示し、誘導30日後には神経突起を伸張させた。一部のクローンについてはEB法による神経分化誘導によっても神経突起を伸張させることが確認された。神経分化誘導の際にアポトーシス誘導がDS-iPS細胞で亢進するどうか検証したところ、クローナルバリエーションが大きいため、その傾向は認められるものの正常iPS細胞と有意な差は得られていない。一方、神経細胞マーカーの発現誘導レベルを測定した結果、誘導レベルの低いマーカーが検出されたが、やはりクローナルバリエーションが認められた。解析クローン数を増やし、得られた結果を確定させることにより、DS-iPS細胞で特異的に起こっている事象を明らかにできると考えられる。
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