研究概要 |
我々が見出した乾癬感受性GPCRと相互作用するいくつかのタンパクを昨年度までに見出した。そこで本年度はこれらの相互作用を直接観察するために、種々の実験を行ったが、確証を得るには至らなかった。一方、乾癬感受性遺伝子領域において、さらに遺伝学的解析を進めた。これまでの解析に用いてきた試料は日本人検体であったが、より多角的に検討するために、他の人種における追試験を実施することとした。このために、今回は解析対象として韓国人乾癬(138個体)ならびに健常者検体(291個体)を用いた。日本人集団において強い関連を認めたマイクロサテライトについて、この検体を用い解析したところ、日本人集団よりもはるかに強い関連を見出した(OR=19.9,P value:3.5E-17)。これまでに報告されているGWASのオッズ比の中央値が1.33であることを考慮すると、極めて強い関連である。すなわち、人種を超えて関連を示している事実は、日本人集団を用いたマイクロサテライトのGWASの結果を強く支持する一方、遺伝学的には日本人と韓国人は極めて近い人種と考えられているが、これほどまでに相違が存在することは進化学的にも非常に興味深い。さて、有害なアリルは進化の過程でかならず排除されため、疾患に寄与するアリルも同様のはずである。しかし、何かしらの選択圧により保存されることがあるならば、それらのアリルで構成されるハプロタイプは比較的近年発生し、集団中で保存されていると考えられることから、その領域には極めて長いハプロタイプ観察されるはずである。そこで、この領域の前後5Mbについて、マイクロサテライトにて、日本人ならびに韓国人集団を用いて解析を行った。そしてその長いハプロタイプが存在するか否か、Extended Haplotype Homozygosity(EHH)により評価した。この結果、乾癬と関連を示したハプロタイプにおいて、日本人集団で少なくとも2.5Mb以上、さらに韓国人集団では4Mb以上に渡って長いハプロタイプが存在することが明らかとなった。すなわち、今回見出した乾癬と強い関連を示すアリルは、まだ理由は明らかではないか、何か他の要因と協調して集団中で保存されていると考えられた。
|