本研究課題に関する、平成24年度の主な研究成果は以下の如くである。 非浸潤性乳癌における性ホルモン応答遺伝子の発現と内分泌療法療法に対する意義。 本科研費で行っていたUMIN CTR 臨床試験(UMIN 000003101)では、2009年11月から2011年12月までの2年間の登録期間中、術前アロマターゼ阻害剤療法が行なわれた10例の閉経後エストロゲン受容体陽性非浸潤性乳管癌症例が登録された。それに対して解析を行なったところ、アロマターゼ阻害剤投与後の非浸潤性乳管癌組織では腫瘍内エエストラジオール及びエストロン濃度がそれぞれ対照群の1.5%、0.6%ときわめて低値を示し、マイクロアレイ解析では、92%のエストロゲン応答遺伝子が治療開始前の発現レベルより1/2以下に減少していた。超音波による腫瘍径の計測では、治療期間が長かった群において有意な減少が観察され、T2強調MRI画像では治療による特異的な変化がみられた。免疫組織学的解析では、プロゲステロン受容体や細胞増殖能のマーカーであるKi-67やプロゲステロン受容体が有意に減少しその変化は治療期間によらず速やかに観察されたが、エストロゲン受容体やアロマターゼの発現は治療の前後で有意な変化はみられなかった。以上よりアロマターゼは非浸潤性乳管癌においてエストロゲン合成に重要な役割を担っており、その阻害が非浸潤性乳癌においても治療上重要な選択肢となりうる可能性が示唆された。 以上の研究成果は現在一流英文誌に投稿中である。
|