1.HPV感染マーカーのひとつであるp16と、HPV感染細胞内でのウイルス粒子の産生パターンとウイルス組み込み様式によってその発現量が変化するL1蛋白を指標とし、子宮頸部病変の予後推測に応用できるかどうかを、病理組織検体を用いて検討した。子宮頸部のlow gradeの異形成(CIN1~2)で、経過観察ののち予後の判明している標本を一部に含む症例群に対し、免疫組織学的にp16とL1蛋白の発現を検討した。症例には48例の病変退縮群と、40例の病変進行群を含む。p16陽性率は病変進行群で有意に高く、一方でp16-/L1-例は病変退縮群と有意に相関していた。p16とL1の発現は子宮頸部病変の進行に伴って、L1-/p16-、L1+/p16-、L1+/p16+、L1-/p16+の順に変化していくことが推側された。以上より、病理組織検体においてもL1/p16蛋白発現の状態によって、病変の予後を推測できることが明らかとなり、実際の日常診断の現場においても有用であると考えられた。 2.液状細胞診検体の可能性を広げるものとして、自己採取検体での利用がある。細胞診自己採取検体は診断に十分な細胞量の確保や、適正な部位からの細胞採取などが実用にあたっての問題点とされている。子宮頸癌検診における細胞診自己採取検体の利用と、HPV検査との併用の意義について検討を行ったところ、自己採取検体では通常の医師採取検体に比べ、Papスメアーでの判定に偽陰性が出やすい傾向があるが、HPV検査を併用することで、病変の検出感度を上げることができるとの結果が得られた。以上から、細胞診自己採取検体の検診への利用は、同時にHPV検査を併用することで、検出感度が低い弱点をカバーできる可能性が示唆された。
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